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チョークで書かれた現実にしおりをはさみました!
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チョークで書かれた現実
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感動していると沢ちゃん先生が教室に入って来た。
『はーーい、おはよー!よし、座れー、HR始めるぞー』
出席簿をペシペシ叩きながら生徒に声をかけている。
俺が影宮くんが机の前にいる事に気づいくと
《どうなった?》と口をパクパクさせる。
俺は沢ちゃん先生に向けて《大丈夫っ!》とピースサインを突き出し、にっと笑うと沢ちゃんも《そうか、良かった》と微笑むと左耳手の親指と人差し指で丸を作った。
少し経って全員が席に着いた事を確認すると黒板に文字を書き始めた。
カッ、カッとチョークが黒板にぶつかる音が教室に響く。黒板に書かれた文字は
【夏休み前。1学期期末テスト 7/15~7/18。】
今までザワザワと騒がしかった教室が静まりかえる。
ふぅ……と沢ちゃん先生が息を吐いた。
『えーっと……。あんた達さ、夏休み気分で盛り上がってるのはわかるけど夏休み前にテストある事…忘れてないよな?』
『……………………………。』
『忘れてないよな………?』
『……………………………。』
『ちょ、まっ、なんで皆あたしから目、逸らすの!…………ん、まぁいいや。って事で来月テストあるから勉強しとけよー?
1つでも赤点の教科があった奴は夏休みに補習だそうだぞ
!はい!終わり!委員長っ号令!!』
委員長の号令とともに、ガタガタと椅子から立ち上がる生徒。そんな生徒の後ろで俺は唖然としていた。
((テス……ト…………、赤点……。補習…………))
その日、俺は昼休みまでほとんど魂が抜けた様に過ごしていた。授業中も先生の話など入ってこなかった、ただ黒板の文字をぼーっとしながら写していただけの時間が続いた。
昼休みになり、いつもの桜の木の下に行くと既に影宮くんはそこでカレーパンを食べながら子猫を撫でていた。
あ。影宮くんもういるんだ、とは思ったがテストの事で頭がいっぱいでそれどころじゃなかった。
俺は影宮くんの隣に座ると購買の焼きそばパンを頬張る。もちろん真顔。もう既に会話など出来る様な状態ではなかった。
俺の異変に1番に気づいたのは影宮くん。
心配そうな顔で覗き込んできた。
『……おい、どした?』
『…え、ナンノコトガデス…カ……ナ…?』
もう駄目だ、自分が何を言っているのかさえよくわからない。
『え、今日のお前変じゃね?
いつも昼休み結構喋ってるのに今日は一言も喋らねぇしテンション低いしパン好きのお前が真顔でパン食うなんて。どー考えても変だろ』
((………お見通しか……………、))
『あぁ…………。
今日のHRで沢ちゃん先生が来月テストあるって言ってたろ?赤点が1つでもあったら夏休み補習あるって。
俺さ、数学だけは小さい時から分かり合えなくてさー、数字見るだけでやる気失せて授業中は寝ちゃってんの。
だからたぶん今までの数学の内容全っ然わかんねぇの。
まじどーしよーって思って……。』
俺は自分の情けなさに泣きそうになりながら話を続ける
『高校最初の夏休み、補習で終わるなんて絶対嫌だよ…。何でもっと前から真面目に授業受けようと思わなかったんだろ俺……どーしよ……』
少しの間をおいて影宮くんが口を開く。
『………なぁ。出来ないのは数学だけなんだよな?
なら、俺、教えられるかも。』
『……………………?!どゆこと?!』
思わず俺は影宮くんの方に前のめりになりながら聞く。
『俺、意外と数学得意。
上手く教えられるか分からないけど、お前がそれでいいなら教えてやる。来週は3連休だしちょうどいいだろ』
少し不安そうな影宮くん。だが俺はその言葉に目を輝かしながら影宮くんの肩を掴む。
『……お願いします!勉強教えて下さい!!』
『おう』
そう言って子猫を抱き上げた時、影宮くんの手首に赤い物が見えた。
『……か、影宮くんっ。その赤いのって…』
俺は影宮くんの手首の方を指差し聞いてみた。
『あ、お前がくれたリストバンド。大切にしてるからな』
影宮くんが袖を捲りながら微笑んだ。
笑顔でそれは反則だろ………、
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