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17.油断大敵
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腰から尻に向かっていく道筋の、ちょうど膨らみ始めたところ。そこを何度も上下に摩る指先が、くすぐったいのか、それだけじゃないのか判断を鈍らせる。
部屋着の薄い生地じゃ指の侵入は防げなくて、好き勝手に弄られるのは当然のことだ。
「リカちゃ、そこばっか……っ、しつこいってば」
逃げたくて。でも逃げられなくて、逃げたくもなくて。
どれが本音でどれが建前かわからないぐらい、色んな気持ちが俺の中で交錯した。けれど答えが見えそうになる度、服の中に入ってきた指が邪魔をする。
もういいだろうって、考えるのを止めさせようとする。
普段は、自分できちんと考えろって言うくせに、こういう時は考えさせないのは狡い大人だ。
でも、俺ももう大人だから。
狡さを知って、上手く逃げるのも昔より出来るようになった。
抵抗するふりをしながら、嫌だ嫌だって言いながらもリカちゃんの指を受け入れる。その動きの隅々にある、快感の端っこを掴もうと意識を集中させる。
けれど、そういった俺の企みを、こいつは絶対に見逃さない。人の揚げ足をとって、人をからかって、ネチネチと苛めるのが大好きな性悪だからだ。
「たとえ痩せたとしても、慧君は慧君で変わりないね。吸いついてくる肌の感触、少し高めの体温。うん、すごく俺好みだ」
うん、うんと頷きながら、怪しかった指の動きがマッサージ用のそれに変わる。
漂っていた妖艶な雰囲気をすっかりと消したリカちゃんは、俺の脇腹を掴むように手を這わせ、背骨近くに寄せた親指にグッと力を込めた。
「んっ……」
「ここ、凝ってるね。デスクワークだからこそ、きちんと身体は動かさないと」
「わかって……る、けど。めんどくさくて」
「理性より欲が勝つところは昔と変わらないね。慧君らしい」
褒め言葉じゃないことをサラッと言うくせに、リカちゃんの指遣いは俺を気遣っていて。てっきりエッチなことをされると思っていた自分が恥ずかしい。
それから、少しだけ残念でもあった。
今すぐその指を服の中、もっともっと奥まで入れてくれたらいいのに。下着をつけていないんだから、簡単に触れられるのに。
それなのに、リカちゃんはマッサージという言葉を守る。あまりにも健全な行為に、普段は置いてあるはずの下着がなかったのは、偶然だったのではないかと思うほどだ。
でも。
すっかり信じて力を抜いてしまって。心にある残念な長持ちが、心地良さに溶けていく。
甦ってきた仕事疲れに、瞼がゆっくりと閉じそうな時だった。
「──こうして、すぐに人を信用して油断するところも変わらないね。慧君」
低音の声と共に、また指が妖しく蠢いたのは。
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