アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
389にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
389
-
人より優れている自信はあった。
あたしには豊やリカがいる。
それがあたしの強みだった。
たとえ誰かに非難されようともそれを黙らせることだって出来た。
人の気持ちには敏感な方だと思っていた。
あたしは優れた人間で、あたしは誰よりも優しくて、あたしは強い。
それは全て自分の驕りでしかないのだと気付いた時には遅かった。
*
「その人と俺、どこが違いますか?」
あたしを見ずに続ける歩ちゃんは無表情だ。
その様子からは何も感じられない。
怒ってるのか悩んでるのか、それとも何も思っていないのか…それすらわからない。
「どこがって違うところだらけよ。
そんなの当たり前じゃない」
年齢も顔も身体つきも声も性格も全て違う。
真逆と言ってもいい。
彼はあたしに正面からぶつかって来なかった。
意地悪することもなければワガママも言わなかった。
いつも笑顔で穏やかで聞き分けがよくて。
ダメだと言われたこともなければ、何かを否定されたこともない。
それは違うな……あたしが言わせなかった。
比べようなど無い。
根本的に違いすぎるのだから。
「こんな話がしたかったの?本当、くだらない」
既に冷たさを失った缶を煽るように飲もうとした…のに手が動かない。
「歩ちゃん?」
ずっと外されていた黒の双眸があたしを射抜くように見る。
それは頑丈に掛けられていた鍵を無理にこじ開けようとしていた。
「今でも竹虎さんが好きなんですか?
俺といても頭に浮かぶのはあの人ですか?」
削られていく金属音が聞こえるような錯覚がする。
固く締めた鍵がへしゃげていく。
「俺じゃ駄目なんじゃなくて、あの人じゃなきゃ駄目なんですか?」
ギチギチと。鈍い音をたてて…ゆっくり形を変える。
「俺が、あの人みたいにしたら…俺を見てくれますか?」
そして鍵は簡単に崩れ落ちる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
389 / 1234