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2の2にしおりをはさみました!
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2の2
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俺の嫌な予感は見事的中。シフトを見せたくなかったけど、俺様二條は容赦ない。スマホでしっかり写真に収められた。で、週明けての今日は部活参加決定だ。
二人に連行されて渋々向かった理科室、また隅っこで先輩達が棚の中に収められていた花器を出して準備をしていた。俺たちも手伝う。
「ぶんちゃん、はさみは用意してきた?」
テーブルに並んだ花器を見ていると、隣に立った一ノ宮が言った。実は、はさみだけは自前らしくて、知らずにいたけど体験入部の時は、教えてくれた先輩のはさみを貸してくれていたらしい。
「一応。」
ホームセンターに行って一番安い花道用のはさみを買ってきていた。気乗りのしない部活でも、人に迷惑をかけるのは本意じゃない。人と関わるのをなるべく避けたいし、身内以外に案じられたりするのもなんだか気が重い。だから、忘れないようにその話を聞いた後にちゃんと買っておいた。
「俺のはさみは、ほーちゃんとお揃いなんだ。ほーちゃんのは左利き用だけど。」
入部届けを書いていた時の二條を思い出す、確か…左利きだ。なんだ、二條もちゃんと花を生けてるのか。また見学ばっかりやってんのかって思ってた。
「ふうん。良かったな。」
俺よりも少し高い位置にある嬉しそうに頷く顔をちらりと見る。さすがカップル。はさみをお揃いにする事に対して、羨ましさの欠片もないけど。
「ぶんちゃんはどれにする?先に決めていいよ。」
部員八名に対して器の数は15個、しかも全部違うものだ。別に器の好みとかない、一番近くにある舟形のを取った。
「あ、その器はほーちゃんも好きなやつ。色がきれいだよね。夜空みたい。」
言われてみれば、夜空。ところどころに散った白い上掛けの塗料も星みたいだ。
「…そうか、」
二條はバケツの中にある花を三つ取って、先輩と話しながらテーブルに並べている。きっと俺たちの分まで用意をしてくれてるんだろう。だったら…。
「じゃあ、別のにする。」
器を戻した。俺にしては、随分と気を回してる。
「お前が先に取ったんだろ、使えよ。」
目ざとく気付いた奴がこっちへ来ながら言う。
「そうだよ、早い者勝ちだよ。」
「でも、俺は何でもいいし。」
「じゃあ、それにしろ。別に俺専用の器じゃない。変に気を使うことないだろが。」
「あ、」
二條は俺が戻した器をさっさと取って、俺の前に差し出した。突然のことに反射的に受け取ってしまう。
「あ、ありがと、」
本当、慣れない。こんなふうに誰かと関わること。気を回したり、礼を言ったり。
「おう。」
長い前髪の隙間、微かに笑う顔。俺はぼんやりと、その表情を見た。
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