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18歳以上ですか?
近い距離にしおりをはさみました!
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近い距離
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「ん~」
伸びをすると、寝てる間に凝り固まった筋肉がほぐされ、身体中に血液が巡るのが分かる。
朝日が目に染みる。
時計も確かめずに、ベッドの中でごろごろしていると、
ピンポーン。
え…
「8時?!」
何てことだ。
続きが気になって、どうしてもページをめくる手を止められなかった本のおかげで寝坊してしまった…
いや、僕は寝坊したことより、今呼び鈴を鳴らしてくれたであろう湊を待たせることに、罪悪感で胸がはりさけそうだ。
「あぁもう!まただらしがないとかなんとか言われる…」
半泣きだ。
急いでベッドから身を起こし、窓際へ駆け寄る。
「ほんっとにごめーん!!今起きました…」
語尾が小さくなっていくのがまた、僕の罪悪感を顕著に表す。
「またかよ~じゃあ中で待つぞ~」
笑いながら僕の家のドアに手をかける。
幼稚園の頃からの友人となると、お互いの家は自分の家のように出入りする。
それぞれの家族は、自分の家族が帰ってきたように「おかえり」と言い、僕らはそれに「ただいま」と答える。
夜に来たとなると暗黙の了解で、その日は泊まるんだってことが伝わる。
「おーい、はやくしろよー」
1階から叫ぶ湊の声が届く。
「わかってるー!ほんとにごめーん!」
これでもかというほど謝り倒し、僕は身嗜みを整えるのもそこそこに湊のもとへ走る。
やっと今日も湊の顔が見れた!と喜ぶ僕を見て、160cmのチビな僕よりも18cm高い湊が僕を見下ろし笑う。
「お前その髪型何?ひよこでも住んでんのか」
笑いすぎて涙を滲ませてる。
「僕の髪型はいいから!はやく行こう!遅刻!」
今にも走りだそうとする僕の視界が、急に暗くなった。
と思うと、湊の家で使ってる洗剤の香りが近くでした。
「ちょっと待ってろ。整えてやるから」
髪の毛に柔らかく触れる、湊の指を感じる。
心臓が破裂しそうだ。
そして、眼鏡をかけなければひどい近視の僕の目が、まるでこれ以上湊を見せないことで心臓を破裂させないようにしているかのように、視界を潤める。
「よし、いいぞ」
湊が手を下ろす。
「まだ眠い?目がうるうるしてる」
顔を覗きこんだ湊は、僕が欠伸をしたから涙が出ていると思ったようだ。
そっちのほうが助かる。
「ううん、眠くない。はやく行こ!」
近すぎる距離の照れ隠しに、僕は湊より先に玄関に向かい走り出した。
後ろから聞こえる「鍵!」っていう言葉に、その照れ隠しは失敗に終わったけど。
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