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本音。 *光汰side*にしおりをはさみました!
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本音。 *光汰side*
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あれから何度呼びかけても応答がない春ちゃんを前にして一瞬、最悪の事態が頭をよぎったが、息はちゃんとしていることに気付きほっと胸を撫で下ろす。
おそらく飲まされた薬の中に睡眠剤も入っていたのだろう。
深く眠っている春ちゃんを起こさないようにそっと俺から離し、ベッドに横たえる。
……それにしても。
さっき言っていたことは、本当なのだろうか。
「本当に……そんなことを思っていたの?春ちゃん…」
ずっと、一人で抱え込んで…………?
”どうして光汰は………俺を責めてくれないの?”
目が覚めてからの、あの激しいパニック状態が嘘だったかのように冷静で、ひどく苦しそうに…悲しそうに発せられた、俺に対する純粋な疑問。
あれは…………春ちゃんの、本音?
俺がしばらく触れていなかった……触れさせてもらえなかったもの。
早く忘れてしまいたい、今もなお俺とあの子を縛り付ける、忌まわしい記憶。
春ちゃんは俺が退院した日からよく謝るようになり、またぼーっと何かを深く考え込むようにすることが多くなった。
中学に入ってからは逆に謝ることもぷつりとなくなったから、てっきり春ちゃんも立ち直りつつあるんだと思っていた。
俺は春ちゃんの異変に気付きながらも、何もしようとはしなかった。
春ちゃんは………あの事故を、自分のせいだと思っている?
俺がけがをする度異常なほど怯え、ずっとそばにいたがるのも
急に強くなりたい、と言い出したのも
全て、その思いの表れ…………?
思い返してみれば、思い当たる点がいくつも浮かんできた。
「ハッ……」
自分の鈍感さに吐き気がしてくる。
春ちゃんをこんな状態にまで追い込んで、やっと気が付くなんて。
自分の頭を殴りたくなる。
どうして俺は気付かなかった?
守るだなんだと言っておいて、結局春ちゃんを傷つけているのは
「俺じゃないかっ……!」
どうして責めてくれないのか、なんて決まっている。
あの”事故”は誰が悪いとか悪くないとか…そういうような話じゃない。
たとえその原因が誰かにあったとしても、決して春ちゃんのせいではない。
震える手を伸ばし、春ちゃんの今は色を失い、陶器のように白い頬にそっと触れる。
眠っている春ちゃんはあまりにも儚げで、触れることさえ少しためらわれてしまうほど綺麗だ。
でも
「俺は……俺は、春ちゃんの笑顔が見たいよ。こんな風に思うのも駄目なのかな……?っ、」
思わず涙がこぼれそうになったのを慌てて堪え、昏々と眠り続ける春ちゃんから離れる。
「っ危ない危ない。春ちゃんのことになると涙腺が緩むんだよなー。しっかりしろ、俺っ!」
そう気合を入れ直して、春ちゃんが起きた時のために飲み物を用意しよう、と俺は台所へ向かった。
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