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Encounter_21
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「雪?」
そういえば、俺が上がってからかなりの時間が経っている。身体を洗うだけにしちゃ長過ぎだ。
流石に心配になって浴室を覗きに行くと、ざああとシャワーの流れる音だけが聞こえ、雪の返事が無い。
浴室の扉を開けてみると。
「雪…!」
シャワーを浴びたまま、椅子から崩れ落ち床にぐったりと横たわる雪がそこにいた。
すぐさまシャワーを止めて雪を抱き起こすと、頬を真っ赤に染めて肩で息をしている。逆上せているのかとも思ったが、どうやら熱が上がっているようだ。
薬が効いてないのか?それとも、風邪じゃ無いのか…?
とにかく雪をバスタオルにくるんで抱きかかえ、また寝室へと運んでいく。
雪は熱い息を吐き、辛そうに顔を歪めている。涼しい格好に着替えさせおでこに湿布を貼り布団を掛けてやると、幾分マシになったようで荒い呼吸も収まっていってホッとした。
何度も熱が上がったり下がったり、本当に身体がボロボロなんだろう。素人の俺では風邪かそうじゃないかの違いや対処法なんて分からないし、本当は病院に連れて行ってやるのが一番だが…雪の容姿をどう説明すればいいのか。
明日、無理を承知であいつに頼んでみようか。
最近は事件が無く仕事も前倒しで終わらせられていたおかげで日曜丸々1日休めたが、明日からは普通に仕事に行かなくてはならない。
その間、雪の面倒を見てもらわないとだし、あいつを呼ぶついでに雪の体調を診てもらおうか…
…あいつに貸しを作るのは癪に障るが、まぁ雪の為だ。
今回は目を瞑ることにする。
さっき電話をかけた携帯を再び手に取って、今度は違う番号に電話をかける。
"井森榮"という名前を押すと、何コールか後、鼓膜が破れそうなほど元気な声が電話から聞こえてきた。
『もしもし!久しぶり!』
「1ヶ月ぶりだな。……もう少し声量どうにかしろよ」
『わはは、すまんすまん』
相変わらずクソ元気なようで安心だ。俺は回りくどいことは言わず、単刀直入に聞いてみることにした。
「実は訳ありの少年を拾ったんだが、身体がボロボロで俺の手に負えん」
『訳ありというと?また売春してる子供かぁ?』
…ほんっとにこいつは。
人の気にしてる地雷を、平気で踏んで来やがって。
「……ちげーよ。それが、獣人…ってやつ?
猫の耳と尻尾が生えてる」
『……なんか悩みあるなら聞こうか?』
「馬鹿、幻覚でも妄想でもねーよ。取り敢えず明日からの預かりがてら、見に来てくんねーか?」
『しょーがねぇなぁ。今度奢れよ』
井森は雪の容姿については信じてないみたいだな…
その後他愛も無い会話を交わし、「じゃあな」と互いに告げて通話を切る。これで心配事無く仕事に向かえそうだ。
もう一度寝室へと雪の様子を見に行くと、会話の声が大きかったのか雪は目を覚ましてしまっていた。ぼんやりと入口に立つ俺を見つめている。
「悪い、起こしたか」
「…大丈夫、です……」
相変わらずの壁を感じる話し方。自業自得すぎる結果にとほほと思いながら枕元の椅子に腰かける。
「俺、明日から仕事に行かなくちゃいけないんだ。だから、代わりの人に雪の事お願いするから。
お前の容姿は見られることになるけど、ちゃんと信頼できる奴だ。それでもいいか?」
雪はそれを聞くと、ゆっくりと頷いてくれた。
いや、今は何も考えられないの方が正しいのか?
あいつで平気だったかな…今更不安になってきた。
ぽんぽん、と雪の頭を撫でてから立ち上がろうとすると、雪は少し悲しそうに俺を見つめてから、ゆっくりと口を動かした。
「おしごと……どこ、いっちゃうの……?」
悲しそうに眉を下げて言った雪に、もう仕事なんて行かないでずっと側にいてやりたいような気持ちになる。
…だけど俺の仕事は簡単に休みを取れるような仕事じゃないし、雪だけでなく、困ってる人を沢山助けに行かないと。
俺はビシッといつも通りの敬礼を決めてから、雪を安心させるようにニカッと笑いかけた。
「正義の味方だからな、皆を助けに行かなくちゃいけないんだよ」
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