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伝えたいこと
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あ……
足が完全に止まって、振り向いた明くんと目があった。
「オレね、ほんとはぜーんぶ知ってたんだぁ。せんぱい、はるひのこと好きだよね」
目の前の景色がぐらりと揺れた。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
また、また、否定される。また、ハルを諦めろって言われるの?
嫌だ、嫌だ、そんなの、嫌だ……
「あ。べつにひてーするわけじゃないっす!ただね、実ちゃんもね、はるひのことが好きなんだ」
「…………それは、」
「知ってた。でしょ」
こくん、と頷く。
明くんはいつもと違う自嘲する笑みを一瞬浮かべると廊下の壁にもたれ掛かった。
「ぜーんぶ知ってた。知ってて何もしなかったんだぁ、オレ。伊織せんぱいが実におどされてたのもぜーんぶ……ごめんね?」
ごめんと口にしても彼はそれが悪いとは思っていない。むしろ、建前上の、シナリオ上のセリフ見たいで……少しゾッとした。
「……なんか雰囲気、違うけど、そっちが明くんの素なの?」
「んー?オレはいつもの明っすよー!裏も表もない!ただね、皆がオレを知らないだけっすよ、せんぱい」
実くんといい、明くんといい、俺の後輩はどうしてこうも一筋縄ではいかない奴らが多いんだ。
今、そんなことを言ったってなんの解決にもならないけど内心愚痴ってやった。
「ね、それより早くみのるのとこ行こ?伊織せんぱいにはね、ちゃーんとそっちでくっついてくれないとオレも困るから」
「……困るって」
「そこまでどんかんじゃ、ないっすよね」
「告白は、したの?」
「……するわけないでしょー。実ははるひが好きなのに。それに実は振られて、友達のオレのところに戻ってきてくれる」
ぐっと拳を握りしめて明くんを見上げる。
俺よりもハルよりも高い身長、正直今の明くんは怖いけどこの際だ。腹をくくってやる。
「明くんは、そんなやり方しか出来ないのかよ」
「……なに?せんぱい」
目が細められた。
瞳の奥で揺れた怒りを感じ取っていても、もう引き下がらない。
「堂々と……言えばいいじゃん!堂々と奪う気で行けばいいだろ!!俺が言えたことじゃねぇけど、狡いよそんなの、待ってるだけで、それで実くんは振り向いてくれるのかよ!!」
「振り向いてくれるわけないんだよ!!」
割れるような声。
怒っている明くんを見たことがない俺は一瞬で萎縮してしまった。
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