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きっと、その先は
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「……なに泣いてんの」
ハルの指がそれを掬って、ちょっと困ったように笑った。
「返事、してもいい?」
そんなの聞かなくても分かる。だから俺はふるふる首を横に降った。
「……俺は」
それでもハルは言葉を俺に落とそうとする。
それ以上は無理だ。もう限界。キッパリ振られてくるって決めたけど、こんなの苦しくて死にそうだ。
「イオのこと、」
「やだ、いやだ。聞かない」
その先に続く言葉が怖い。耳を塞いで、小さな子供みたいにやだやだ、って繰り返す。
「イオ、聞いて」
「聞かない、聞きたくない」
「兄さん」
耳を塞いでいた手を絡めとられて、少し掠れた声が届いた。目に映るのは、愛しそうに俺に触れるハルの姿。
「好き」
ハルの口からころん、と落とされた言葉は俺が一番欲しかった言葉。一番あり得ないと、遠ざけていた言葉。
「好きだよ、イオ」
ぽろり、と涙が頬を伝って地面に黒い染みを作る。
これは悲しくて息苦しい涙じゃない。
これはたぶん、嬉しくて零れた涙。
「……恋愛、的な、意味……?」
言葉を繋いで繋いで、落とす。
落とした言葉を拾ったハルがぷっ、と吹き出すように笑った。
「うん、恋愛的な意味」
あ、って思えばそっと唇が重なる。
甘くてしょっぱいキスはじんわりと心に染みて、なんだかくすぐったく感じた。
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