アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
好きの痕
-
日が暮れ、赤く染まる世界。
今日も長い授業を終えてぞろぞろと帰宅する生徒を教室の窓からぼんやりと眺める。
隣の教室からだろうか、雑談する男女の声が貸すかに耳に届く。あははと照れたように笑う声はとても楽しそうだ。
……俺が、もしもハルと他人で、女子で、すっげー美少女とかだったら……
こんなに苦しむこともなかったんだろうか
「……って、ばっかじゃねーの、俺」
兄弟じゃなかったら、男じゃなかったら、俺は今ハルと笑ってられない。出会うことすらなかったかもしれない。好きにさえ、なって貰えなかったかもしれない。
それに、恋はたくさん苦しんで苦しんで……それを乗り越えてこそ本物の愛ってやつなんじゃねぇの。
俺はハルに想いを伝えたとき、決めた。
この先どんな辛いことがあっても、ハルへの想いは揺るがないって。
たとえ、離れることになったとしても。
「……イオ」
びくりと反応する体。
奥が疼くような低く響く、ハルの優しい声
ゆっくりと振り向けば俺を射ぬく気だるげな瞳。その内に秘められた……確かな熱。
ぐちゃぐちゃに溶かされたあの夜のことを思い出して、顔がカーッと熱くなる。
「なに赤くなってんの?」
「なっ、なってねぇーし……」
「なってるよ」
いつの間にか詰められた距離。
ぷにゅ、と頬を掴まれて必然的に唇が尖る
「……エロい顔」
「っ!」
ぼそりと呟かれた甘い声。
付け加えるようにちゅ、と重ねられた唇。
教室に誰も居ないからって、こんな、こと
『兄弟なのに男なのに、幸せになれるわけないでしょう?』
「……」
実くんの言葉が呪いのように繰り返される
何度も、何度も、何度も。
「伊織?」
分かってる。
分かってるよ。
「…………帰ろっか」
でも、今日だけはハルを好きで居させて。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
79 / 108