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⑥
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「何か悩みごと?」
単刀直入に、世良さんに聞かれる。
こんなヘラヘラした態度の世良さんでも、意外とそういうことは鋭いから、俺は目を伏せた。
「何でも無いです……」
「そうかなぁ?」
世良さんは、何かを見透かしたように言葉を発する。だから俺は、思わず心臓がドキリと脈打った。
この人は、本当に関わり難い。
「陽裕くんさぁ、遥斗くんのことで悩んでるんだよね?」
(なんで……)
俺は返す言葉が無かった。
嘘を吐いても意味は無いし、そうだと認めてしまうのも何だか嫌だった。
「俺、何にも言ってないですけど……」
俺が少し口ごもりながら言うと、何か可笑しいのか世良さんが声を出して笑う。
「陽裕くんさぁ、悩みごとで遥斗くんが絡んでくると思い詰めたような顔するから分かりやすいんだよねぇ」
だから全然隠せてないよ、と世良さんは楽しげだ。
そんなことを言われたら、次こそ何も返せない。
「そんなこと……」
「無くないよ。だってほら、今だって辛そうな顔してるよ?」
「っ……」
俺は、もうどうしようもなくなって世良さんの方を見上げた。だけど、その笑顔は俺への心配も含まれていて。
「オレで良ければ、話くらい聞くよ」
その表情に断ることが出来なくて、俺は困ったように視線を逸らす。
いつもと違う顔をされるから、こっちが戸惑ってしまうじゃないか。
「…オレは別に嫌じゃないからさ、陽裕くんの悩みくらい聞かせて。オレだって年上だし、アドバイスもしてやれるよ」
(迷惑だ……)
一ノ瀬くんに甘えられなくなったら、次は世良さんに甘えるのか。
口ではそう言っても、俺の悩みなんか聞かされては迷惑だろうに。そんなのは申し訳無い。
だから、ぜひ相談させてくださいとは言えなかった。
「大丈夫です。1人で解決出来ますから」
「うーん……」
俺の言葉に、世良さんは首を傾げる。
どうやら、簡単には帰してくれないようだった。
「そんな顔して大丈夫って言われてもねぇ……いいからオレに話してよ」
それは本当に俺を心配しているみたいな口振りで、やすやすとは断れない。
俺は、控え目に問い掛けた。
「…それは、先輩命令ですか?」
そう言った途端に世良さんの表情が明るくなり、世良さんは嬉しそうに頷いた。
「うん」
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