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お預けは①
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やっと、目覚めの良い朝を迎えることが出来た。
と、思ったら、すぐに平日が始まるのだ。
(疲れた……)
これは、週末よりも酷い疲労感ではないだろうか。
身体は怠いし、重い。
今回の二日酔いはやたらと長く続いたもので、吐き気は治ったが、昨日の夕方頃まで頭痛は治まらなかった。
夕方の5時に寝てから今の今まで、数時間置きに頭痛で目を覚ます、ということを何度か繰り返していた。
「おはようございます」
着替えを済ましてリビングへと移動すると、丁度朝食をテーブルの上に並べる最中だった一ノ瀬くんに挨拶をされる。
しかし俺は、一ノ瀬くんの顔を見た瞬間に色々と申し訳無くなってしまい、挨拶を返すことなく黙り込んでしまった。
「どうしましたか」
「いや、その……」
あれだけ看病されて、もう無理だとか、助けてだとか、嫌だとか、ほんと勝手なことばかり言った。
俺は何て言えばいいのか分からなくなって、俯く。
(まずは、謝らなきゃ……)
すると一ノ瀬くんは、いつも通り優しい言葉を掛けてきて。
「佐伯さん、とりあえず座りましょう」
そう言われたら、俺は従わない訳にはいかないだろう。だから仕方無く、テーブルの前に座った。
目の前の朝食は、毎回のことながらすごく美味しそうで、しばらくまともなご飯を食べていなかった俺はお腹も空いている。
だけどそれよりも、一ノ瀬くんに対する謝罪の気持ちが勝って、食べる気が起きなかった。
「食べないんですか」
「食べます……けど…」
俺が口籠ると、一ノ瀬くんは、ふっと声を出して笑う。そんな仕草にも、俺はいちいち胸を鳴らした。
「…佐伯さんが体調を崩したのは俺のせいですから、そんなに気負わないでください」
「でも俺、すごく迷惑掛けましたよ……?」
食べられそうなお粥を作ってくれたり、食べさせてくれたり、着替えの手伝いをしてくれたり。
本当に、一ノ瀬くんの手を煩わせたと思う。
「そうでもないです」
しかし、だって、と一ノ瀬くんは茶碗と箸を手に持つ。
「…佐伯さんが弱ってる姿も可愛かったので」
恥ずかしげも無く、そう一ノ瀬くんは言い放った。
「っ……」
俺は面食らって何も言い返せない。
それから一ノ瀬くんは、素知らぬ表情で朝食を食べ始めた。その態度は絶対にわざとだ。
何だか俺は、そんなことを考えて看病をしてくれていた一ノ瀬くんに、申し訳無いなどと思っていたことが馬鹿馬鹿しくなってきた。
「…もう絶対に、一ノ瀬くんとは飲みませんから!」
赤くなったであろう顔を隠すように、俺はただひたすらに朝食を口に運び続けた。
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