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昼になっても、佐伯さんは少しムッとしていた。
弱ってる佐伯さんが可愛いって言ったのを、まだ気にしているのだろう。
「佐伯さん」
俺が声を掛けると、丁度パソコンを閉じた佐伯さんがこちらを振り向く。
その表情は、なんだよ、とでも言いたげで、それすらも可愛く思えてしまう自分はどうなんだろう。
そういうのが自覚無しだから、佐伯さんは襲われるのではないのだろうか。
「ご飯、一緒に食べませんか」
「いいですけど……」
そう言って、佐伯さんは渋々立ち上がった。
どうしてこうも佐伯さんは変なところで意地を張るのだろうか、と俺は苦笑した。
(可愛い……)
そう思うけど、これ以上は佐伯さんの機嫌を損なわない為に、口には出さない。
廊下に出ても、佐伯さんはまだツンとしていて。
ずっと無言のまま、俺から目を逸らしていた。
「佐伯さん、まだ怒ってますか」
「……別に」
佐伯さんは、全くこっちを向いてはくれない。
やっぱり怒ってるんだ。
ただ、本気で怒っている訳では無くて、多分、拗ねていると言った方が正しい感じがする。
俺は何とか、佐伯さんにこっちを向いて欲しくて。
「佐伯さん」
名前を呼びながら、トントンと肩を叩いた。
それでも佐伯さんが俺の方を見てくれることはない。
(……困った)
佐伯さんが拗ねるのは初めてだったから、俺はどう対応すべきか悩む。
まぁ裏を返せば、俺に反抗出来るくらいには心を許してくれている、という解釈も出来るから、それはそれでいいのだけれど。
前までは、俺を困らせまいと気遣いばかりされていたから、この態度も俺にとっては嬉しい。
でも、ずっとこのままでも困るな。
「俺が佐伯さんのこと可愛いって言ったの、謝ります」
少しでも、俺に気が向けばいい。
そう思って、俺は佐伯さんの前に立った。
そして、佐伯さんに避けられるよりも先に、俺は少しだけ身を屈める。
「…なにっ……」
頬に触れた手に佐伯さんは目を丸くするが、俺はそんなことは関係無しに顔を近付けた。
「っ……」
そのままキスをすると、佐伯さんはぎゅっと目を瞑り、全身に力を入れる。
そんな、キスをすることすら不慣れな佐伯さんだから、余計に愛おしくなるんだ。俺のスーツを握って必死になる姿も何もかも、やっぱり大好きだと思った。
「…すみませんでした」
唇を離すと、佐伯さんは涙目になっていて。
「馬鹿なんですか!」
なんて、更に怒られた。
でも、その顔はすごく赤くなっていて、それを隠したいのか、俺の胸元にトンと頭を預けてくる。スーツを握られる手も、僅かに震えていた。
「誰かに見られたら、どうするんですかぁ……!」
(……あ)
佐伯さんは余程恥ずかしかったのか何なのか、耳まで真っ赤に染め上げている。
(やばいな……)
それも、やっぱり可愛くて。
俺は、思わず笑ってしまった。
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