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"今日は、お預けだなんて言わせませんよ"
(なに、お預けって……)
今日のお昼の時間、一ノ瀬くんに言われた言葉を何度も頭の中で巡らせていた。
それに、お昼は廊下なんかでキスされるから、その後からの時間は仕事に集中なんて出来なかった。
誰かに見られていたのではないか、とか色々考えたら、それではもう仕事どころじゃない。
(何考えてるんだよ……)
俺は寝室で着替えながら、ベッドに腰掛ける一ノ瀬くんへと視線を向けた。
あれだけ顔を赤くしてしまったら、今更不機嫌な態度を取っているのも馬鹿らしい。
「……あの、一ノ瀬くん」
仕方無く、俺から声を掛けてみた。
「はい」
「…お預けって、何なんですか?」
そう聞くと、一ノ瀬くんは優しく微笑んで俺に手を伸ばしてくる。口では何も言ってくれない。
だけど、俺はその両手に誘い込まれるように、結局は一ノ瀬くんの元へと行ってしまうんだ。
「膝の上、座ってください」
ポンポンと自身の膝を叩いて、一ノ瀬くんに促される。どうして、と思いつつも、俺はその通りに腰を降ろそうとした。
しかし。
「…逆です」
一ノ瀬くんは言って、振り向く俺の目を見る。
俺は一ノ瀬くんに背を向けて座ろうとしたから、つまりは向かい合わせで座れ、ということなのだろう。
だけど、そんな態勢は恥ずかしい。
「どうしてですか……」
せめてもの抵抗に弱々しい声を出してみるが、そんなものは一ノ瀬くんにとっては何の効果も無い。
「お預けは、今日ください」
とか、訳の分からないことを言われるだけだった。
分からないのに、俺はどうしても嫌だと言うことが出来なくて。本当は俺だって、嫌な訳じゃ無いのかもしれない。
俺はもうどうしようもなくなって、視線を落としながら一ノ瀬くんの膝の上に跨った。手は行き場を無くして、一ノ瀬くんの肩にそっと置く。
(なんだよ、これ……!)
多分また、顔は赤くなっている。
「一ノ瀬くん、何がしたいんですか……っ」
一ノ瀬くんの方が下にいて、自然と見下ろす形になる。それが、何とも言えないくらいに恥ずかしかった。
(嫌だ……)
どうしてこんなに、恥ずかしい思いばかりされなきゃいけないんだ。
「……ん」
すると、一ノ瀬くんが瞼にキスを落とす。
一ノ瀬くんの膝の上では、俺には逃げることも出来なかった。
「泣かないで」
「泣いてなんかないです!」
一ノ瀬くんの甘い声がとても耐えられそうになくて、つい叫んでしまう。
それなのに、一ノ瀬くんはただ、ふふっと可笑しそうに笑だけだった。
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