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気まずい人
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(聞かれてないよな…!?)
ゴクリと唾を飲む。
ロッカーに隠れるように上村に背を向けて、コツコツ歩くのを背中に感じていた。
西日の差すスタッフルームは暑くて、たらりと汗が流れた。
コツコツコツコツ…ガタン
パイプ椅子が引かれる音がした。
雄大はロッカーの鏡の隅に浮かない顔をした上村が映った。
「……」
ちらりと見ると鞄を机に置いて、溜息交じりに外の見えない磨りガラスを見ていた。
(あっ…)
ふと、自分の横のロッカーを見た。
「ご、ごめん。僕の荷物が邪魔だったね。ロッカー、使って!」
雄大は片側だけメイクを落とした顔で、服の入った紙袋を退けた。
「…んっ?あぁ。」
上村はロッカーの存在に始めて知ったかのように顔を上げ、立ち上がった。
いつものようでいつものようでない上村の顔をつい目で追ってしまった。
「??」
横に立っても浮かない顔と言うか、疲れたような重苦しく動く上村を雄大は初めて見た気がして、つい凝視してしまった。
「…またエライ奇抜な格好してますね。」
「はっ!?」
横を向いたまま言われたので、一瞬自分に対して言われたことに気がつかなかった。
上村は目だけちらりと雄大の着ているものに目を向けた。
「その格好で接客していたんですか?いくら愛社精神があるとはいえ、女物を着るとは…」
雄大はハッと自分の着ているワンピースを見下ろした。
「ちが、違うよ!!これは、イベントの為だよ!」
「イベントの為に女装とは…恐れ入りますね。」
いつもの見下したような上村の口調に雄大はフンッと顔を背けた。
(心配して損したわ!)
憤慨しながらギュギュッとメイクを落とした。
スタッフルームはシーンとした空気が流れた。
(早く着替えてやる!)
雄大は上村に背を向けてレギンス脱ぎだした。
(張り付いてて…脱ぎにくい…)
「大変ですね。」
バタンと後ろからロッカーの閉まる音がした。
(ちくしょう。。。)
言葉にならない思いを噛み締めながら、ようやくレギンスを脱いだ。
チラっと見るとまだ上村が雄大の背中を見ていた。
「……あの…先行っていいよ?」
「いいんですか?」
不敵に笑う上村に(あん!?怒)と思いながら、ワンピースの背中のファスナーに手を伸ばした。
(ん?ん?)
手を伸ばすが、こんな物を着るのは初めての為、ファスナーの外し方がわからなかった。
(着る時は店長がしてくれたからな…)
焦っても指が引っかからず、肩が痛くなってきた。
「ーーんっーー」
手が痺れてきた時、スッと細い指が絡まった。
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