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最後の夏
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「夏祭り…ですか?」
「うん。うちは焼きそばをしてくれって!」
バックルームで夏物商品を本社で送り返しの荷物を段ボールに詰めている途中だった。
「……うちは雑貨屋…まぁ、紅茶とかはありますけど…」
「焼きそば屋さん!」
店長は子供のように声をあげて、ガムテープをピリピリとはいだ。
かくして我々、お家に彩りを加えるをコンセプトに展開している雑貨専門店「room service」は、モールのお偉方のご命令通り、1日だけ”焼きそば屋”に転向することになった。
「……なんで…こんな事に…?」
雄大はキャベツを切りながら、首をひねった。
モールの中央広場は小さなテントが所狭しと並び、みんながみんな、悪戦苦闘している怒涛の声がしていた。
「聞いた情報によりますと、今年は猛暑で客足も良いのでこれに便乗して、最後の追い込みで夏祭りらしいですよ。」
すでに玉のような汗をかいた牟田がフーフー言っていた。
「で、なんでテナントが?」
「なんかこの部分が空いていたそうです。ほかのテナントも入らなそうだし、焼きそばでもやろっかって、本部が言い出したけど、やる人かいなかったって。」
「……で、何でうちなの?」
「さぁ?まぁ、何らかのリベートはあるでしょうが…まぁ、うちは店長が弱いからいいように言われてるらしいですよ。これ、食品フロアの人とフードコートの人からの情報なんですけどね。」
(牟田さん、そう言えばよく試食させてもらったりしてるな…)
かき氷ゾーンを愛おしそうにで見る牟田がタオルで汗を拭き取った。
「しかし…なんと言うか…」
急越しのホットプレートを見ながら雄大は呟いた。
「親しみやすい屋台らしいです。」
「ただの低予算だろう。ショボイ感じ…」
「もう焼いていいんでしょうか?」
「牟田さん、焼ける?」
「食べる専門です。」
「…キャベツとかどれ位?」
「キャベツ無くても、麺にソースかかってるだけでいけます。」
「……いやいや、そんなの300円で売れないよ。100円だよ。てかなんで僕と牟田さん?野上さんは?」
「野上さんは陽に焼けるからしたくないって、言ったました。」
「……」
「店長は月末締めです。」
「知ってるよ!」
雄大はぐるりと派手な黄色い法被を回して、羽織った。
「よし!!もうやってみよう!!」
「椿さん、あの法被、手が回らない!汗」
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