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3.思い掛けない存在-14
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ユキジは父親の存在を知らない。どんな人なのか、どんな顔をしているのかも。全て知らない。ただ、一つだけ分かるのは、その目が青い目だった事だけ。
母親に捨てられた理由の、この、青い目が一緒という事だけ。
「はー。カタコトの日本語疲れる。オレ、本当は日本語も喋れるんだよね。親父が日本に長くいたから」
「……」
「だから、あんたが産まれた」
「え……?」
「親父は学生の時に留学で日本に来た。その時に、あんたの母親と出会った。そして、あんたが産まれた……」
「そ、そんな事……」
ユキジは初めて聞く両親の出会いに、戸惑いを隠せない。その話しが本当なのか分からないから尚更だ。
「でも、故郷にはフィアンセがいて、親父は戻る事を決めた。そのフィアンセがオレの母親」
「え……?」
「親父は日本に子供を作った事をオレの母親には言わなかった。勿論、俺にも。まぁ、元々遊びのつもりであんたの母親と寝てたのに、まさか子供ができるとは思ってもなかったんじゃないかな。オレの母親は伝統的な血筋だから、そんな人間を切る事はしない」
その言葉に、ユキジは見た事もない、存在自体抹消していた父親に憤りを感じた。
ふざけるな。そう、思った。
「けど、一昨年母親が亡くなって、親父がオレにだけその事を告げて来た。オレには兄がいるって。名前はユキジだって」
「え……」
まさか父親がユキジの名前を覚えていたとは思ってもいなかった。知らないと思っていた。その、ユキジの存在自体も。
「で、留学の時に知り合ったあの監督にあんたの事を聞き、オレを日本に送ったって事。まさか、本当に本人に当たるとは思ってもなかったけど……。でも、間違いない。その目の色はオレ達と一緒だ……」
そう言って、ユキジの目を見詰めるラウル。その目はさっきとは少し違って柔らかかった。
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