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4.冬椰壱成と言う男-3
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ユキジはこんな自分に嫌気がさし、もう少し変わりたいと思ってしまう。
そうすれば、下を向きながら生きる人生も変わると思えた。でも、思っていても簡単には変えられない。
生きてきた生い立ちがそうさせる。
「お前大丈夫か?」
「え……? なにが?」
「ドラマ。あの男と色々するんだろ?」
「あの男?」
「今、名前が出た冬椰壱成だよ」
「あっ、ああ……うん」
冬椰壱成。その名前を聞くと、ドキッと変に心臓が大きく鳴る。
さっきもそうだ。小百合が名前を出した途端、ビクッとなってしまった。
そうなってしまうくらい、この間の壱成とのやり取りがユキジにとっては印象深い物だったのだと思う。
あの抱擁は、忘れる事はできない。
「ねぇ、祝。壱成って人……どんな人なのかな?」
「え……? なんで俺に聞くんだ?」
「だって、聞ける人いないし……」
良い人なのか、悪い人なのか、全く掴めない壱成は、ユキジにとっては攻略不可の存在だった。
テレビで何度か見た事はあるが、真面目で頭が良く、リーダーシップに長けているように見え、ユキジは勝手にそんな存在だと思っていた。けれど、本物を知れば知るほど
、テレビで映るのは表向きで、裏の顔は、メンバー仲間の秋幸を誰よりも愛し、そして、秋幸の恋人になった祝を嫌っている、人間らしい男だった。
それは、少しだけ自分に似ている部分だ。好きな人を横から取られてしまった仲間。そう勝手に親近感を覚えてしまった。
「アイツは……何を考えてるか分からない男だ」
「それは僕も思う……」
「でも、秋幸の事を想う気持ちは俺の次に強いとは思っている」
「え……?」
「俺もうかうかしてらんないなって思う時がある……」
「そうなんだ……」
「俺だって、秋幸を想う気持ちは誰よりも負けない自信はある。でも、一番長く時間を過ごしてきたのはあっちの方で、秋幸について俺の知らない事もたくさん知っているはずだ。それに、秋幸が危険な目にあうのをちゃんと阻止してくれる……。そんな人間を、好きにならない奴なんていないって俺は思う。まぁ、漫画やアニメの見過ぎだからそう思うのかもしれないけどな……」
そう言って、祝は持っていたスマホを触った。たぶん、秋幸の事を考えてしまって、会いたくなってしまったようだ。
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