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公務をすっぽかして庭でぼんやりしている奏に近付いて言った
「まだ理解出来ないって顔がバレバレですよ、王子」
「楓・・・俺は」
「ここにいる空は本物の空じゃない、でもね・・・もしかしたら本物の空も違う世界で俺達のような人間に会って生きているんじゃないかな」
「でも戻れる保証など無い!」
「怒らないの」
「・・・・・・・・・・」
「奏、ここにいる空にもう少し優しくしてあげて欲しいな・・・苦しいのは奏だけじゃないはずでしょ?」
「優しくしているだろ」
「そう?」
「・・・・・・・・・・・・空を思うと心が痛むんだよ、違う空に優しくしたら裏切っているような気がしてさ」
「わかるけど今の奏は日本から戻って来た奏と同じ」
「日本に居た頃は毎日が楽しかったな」
「そうだね、色々な事があったけど好きな事が出来たしね」
「ここへ戻る時は心が張り裂けそうだった・・・空を俺は・・・だからっ、もう裏切るような事はしたくない」
「じゃここにいる空を見捨てるの?」
「・・・・・・・・・俺にはわからない」
「奏がそうしろと言うのなら従うよ、でもそんなに冷たい王子なら側近を辞めて空と凱と三人で自由に暮らすかもね」
「脅しか?」
「違うね、本音だよ」
「ったく・・・お前には毎回頭を悩まされる」
「そう?」
「本物の空はここに来て本当に幸せだったのだろうか?」
「もちろん大変な事だらけだったけど空の幸せは奏の傍に居る事でしょ?だからここまで来たんだよ?」
「そうか・・・そうだよな」
「だからと言って、今いる空を愛せとは言っていないから勘違いしないでね」
「わかってるよ」
「さっ、王子・・・そろそろお着替えを」
「やめろ」
「ふふっ」
「じゃ、俺は行くね」
「ああ」
奏もかなり参っているみたいだな
と言うか、俺だってまだ戸惑っているんだけどね
「溜息とは珍しいな」
「凱」
「好きな奴でも出来たのか?」
「冗談にしては笑えないね」
「悪かったよ、で・・・空の事か?」
「それもあるけど奏も重症みたい」
「だろうな、理解しろと言う方が難しい」
「聞いてもいい?」
「何だ?」
「もし俺が違う世界に行って同じ顔の俺が現れたらどうする?」
「真面目な質問か?」
「うん」
「そうだな・・・まず奏と同じようにすぐに気付くよ」
「その後は?」
「愛する事は無いけど、もうお前が戻らないかも知れないと思うと心が張り裂ける思いかもな」
「その人を愛するという選択は?」
「無いな・・・でも死ぬまで辛いと思うよ」
真っ直ぐな瞳で見つめる凱
本音しか言わないからこんな時俺は脆くなる
「俺、本当は違う世界から来たんだ」
「じゃ、これは平気なんだな?」
「ひっ!!」
まさかのトカゲ!!
「ばーか!俺が間違うかよ」
「だね」
「お前は本物だ、俺の目に狂いは無い」
「うん」
凱を抱きしめながら二人でしばらく無言の時を過ごした
何も言わなくてもいいんだ
きっと凱にはわかっているはずだから
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