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いつもの光景
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「浅神……は、またサボりか」
担任の先生が来て点呼をとっていく。
先生のその言葉につられて前の席を見るとやっぱり空席だった。
僕の前の席は、いつも空席。
浅神くんが座ってる姿を見たことがないぐらい、ずっと空席だ。
浅神くんは学校中みんなから怖がられてる人で、問題児だって先生はいつも言ってる。
僕は見たことはあるけど、話したことはないから浅神くんがどんな人なのかわからない。
見た目はちょっと怖かった。
でも、なんて言うか話してみたいなって初めて思った人だったのを覚えてる。
一限の授業が始まると、僕は頭を切り替えて板書を写して先生の話を聞いていく。
僕はあまり勉強が得意じゃないから、ちゃんと先生の話を聞かないとテストでいい点が取れないんだ。
成績が良くないと叔母さんに怒鳴られるし、叔父さんに殴られるから、僕は一生懸命覚えなきゃいけないんだ。
「ここ、テストに出るからな」
先生が授業中にくれるヒントを一緒にノートに書き込んでいく。
えぇーっと、ここちょっと難しいからもう一回時間があったらやってみるから印つけてっと……なんて、僕に余裕のある時間なんてあるわけないのに。
学校終わったらすぐに家に帰って洗濯物を取り込んで、畳んだら今度は夕飯の買い出しに行って時間に間に合うようにご飯を作って、そしたらみんながご飯食べてる間にお風呂の準備して、それが終わったら食器片付けて……僕に時間の余裕なんてない。
唯一休まるのが学校にいる間だけ。
みんな平等に休み時間があるから、学校にいるこの時間が僕は好きなんだ。
友達はいなくても、ずっと一人ぼっちでもぜんぜん大丈夫だから。
だって僕、遊ぶ時間なんてないから。
流行りモノもなにも知らない。
だから、この学校で聞く情報が僕の最先端だから他のみんなより一歩遅れてるんだ。
****
午前中の授業が終わると、みんなが鞄からお弁当を出したり食堂や購買に走る。
僕はそんなみんなを横目に外に出ると人目のつかない校舎裏の寂れたベンチに座って朝買ったお水飲んだり、飴玉を舐めながらお昼休みが終わるのをじっと待つのがいつものスタイルなんだ。
食べ物は喉を通っていかないし、無理に食べようとすると吐いちゃうから、だから心配されないように1人になれるここで過ごすのが当たり前だと思ってたんだ。
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