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来訪者
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「お客様?」
「ああ、ここに来ることになった」
フィリオは盛大なため息と共に、屋敷に人が来ることを告げた。そんなに嫌な人なんだろうか。
「どこで聞いたのか、お前のことを知っていてな。一目見せろとうるさいんだ」
「俺を…?」
「だが、見せる気はない」
「そうなんですか」
「見せられたいか?」
「いえ、別に。見られたくはないです」
この間までいた見せ物小屋でもあるまいし、他人にじろじろ見られるのは嫌だ。
「部屋から出なければ会うこともない」
俺の頭をぐしゃぐしゃ、と撫でてから、フィリオは部屋の外へ出ていった。あの人は何故か俺を撫でるのが好きだ。でもぐしゃぐしゃにするのはやめてほしいなぁとは思う。
「…することない…」
ごろん、とベッドに横たわる。
お客様は一体いつ来て、いつ去るんだろうか。
聞いておけばよかった。
「……俺を見たい……」
その人も俺のことをペットくらいにしか思ってないんだろう。いや、実際そうなんだけれど。フィリオにとって俺は珍しいペットか玩具だ。まぁ、痛い思いも空腹も感じることはないから、飽きるまでは安泰かもしれない。買われてから数日、俺が悩んだ末に出した結論はそれだ。諦め。もうどうにでもなれという諦め。
そっと目を閉じ、暗闇の底へ沈んでいく。
目を開けたらお客様がいなくなっているといい。そう思いながら、俺は意識を手放した。
「…」
寒い。そう感じて目を開ける。
むくりと体を起こし、寒さの正体を探すと、窓が開いているのが目に入った。そうか、窓を閉じないで寝てしまったんだった。こんなことで風邪を引くのも馬鹿らしい。起きたばかりの頭はぼんやりとしているが、欠伸をしながら窓に近づく。
その時点で違和感に気づけばよかった。
背後に気配を感じた瞬間、俺は何者かに口元を押さえつけられ羽交い締めにされた。
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