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小学6年生。4
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「 ちょっとは、落ち着いたか?」
「うん……ごめんね、敦史くん」
「いいって」
どれぐらい泣いちゃたんだろう……少しだけ頭が痛い。
今はもうとっくにお昼休みに入っていて周りがざわざわしている中、僕達は砂まみれになった足を洗っていた。
蛇口から出る水が太陽の光できらきら輝いている。
……今の僕とは大違いだ。
いっぱい涙は流したはずなのに、少しもスッキリしない。
ここに来るまでの間に、すれ違いで聞いたほんの一瞬の会話。
『昼休み、美樹告るんだって~!』
『まじっ!?あの二人本格的に付き合っちゃうのかな~』
『お似合いだもんね』
そう、興奮した様子で話す女の子たち。
僕にはどうすることもできない。
……今までと同じようで、同じじゃない。
樹くんが凄くモテるのは、ずっと前から分かっていたことで、告白もいっぱいされていることも、もちろん知っていた。
でも樹くんが、それに応えることは一度もなかったんだ。
だから、僕は安心していた。
けれど同時に、樹くんへの想いは一生叶わないものなんだって実感していた。
告白した子は、みんな可愛いかったから……
元気で明るい子も、おしゃれな女の子も、僕には到底敵わない子達が樹くんに断られているのだから。
そう思うと、何もできなかった。
それなのに、樹くんと触れ合うようになって浮かれていたんだ。
縮まる距離に段々自分勝手になっていった。
あるわけない可能性を見つけて期待なんかして……結果バチが当たったんだ。
今日は運動会で、その競技だから……きっと樹くんは協力しただけ……そんな思いすら自分勝手な想像でしかないのに。
たくさんの人に囲まれても樹くんは何も言わなかった。
それは、結婚したい人に選ばれてそれを受け入れたっていうこと。
手を繋いで隣に並ぶ二人は、凄くお似合いだった。
僕は、ただ遠くで見つめることしかできなかった。
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