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第二章:遥かな悪魔のおそ松兄さん6
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「何やってんだよ!おそ松兄さんっ!!」
「えー…いいじゃん。別に」
おそ松とチョロ松が、また言いあっている。
どうやら、おそ松が、チョロ松の消しゴムをまた勝手に使ったらしい。
何回やっても懲りない奴だ。
しかしそうは言っても、チョロ松だって、おそ松の物を勝手に使うのを、俺は知っている。
昨日なんて、おそ松のバス回数券の綴りを勝手に持ち出していた。
それを思えば消しゴムなんて可愛いものだろうに。
ただ、チョロ松は、使った物を何事もなかったように、元の場所に戻す。
対し、おそ松は、戻すどころか、そこら辺に置きっ放す。
チョロ松にしてみれば、あるべき場所から、あるべき物を消されているわけで、怒って然るべきことなのだが。
それにしても
ああ
苛立つ。
何であの二人は、いつもいつも一緒にいるんだ?
子供の頃からずっとそうだった。
気が付くと、いつも半ば抜け駆けのよう二人でつるみ、悪さをしていた。
…あの二人には、前世の記憶がないはずなのに。
「今日という今日は、勘弁しない!お説教するから、二階に来い!」
「やーだー」
チョロ松はおそ松の後ろ首を掴むと、そのままおそ松を引きずり、居間から出ていった。
ああ、
地獄だ。
あんな仲良しぶりを毎日毎日延々見せつけられて。
おそ松を先に見つけたのは、俺なのに。
前世では、湖の女神に仕える水の精だった俺。
主の使いで魔国行った時。
うっかり地図を落として迷子になり、泣きべその俺に、「どうしたの?」と花のように笑い掛けてくれたのが、あの悪魔、前世のおそ松だったんだ。
でも、あいつは、女神がよかったんだよな…
湖の埋め立てが決まり、女神の寿命も僅かって時。
身の振り方を考えていた俺に、死神が声を掛けてきた。
「現世で叶えられなかったこと、次の世に掛けてみなーい?」
聞けば、女神と悪魔が転生するらしい。
二人揃って。
「あんた、このままだと嫉妬で悪霊になって、どこぞでご迷惑掛けないとも限らないから、あの二人と一緒に転生しちゃってくんない?」
後で知ったんだが、悪霊の取り締まりも死神の管轄らしい。
余程、仕事増えるのが嫌だったんだろうか。
転生は兄弟として。
記憶を持ち込めるのは、三人のうち一人だけ。
微妙な条件だったが、俺は二つ返事でOKした。
来世に少しでも望みを繋げられるなら…と。
が、しかし、何なんだ!
俺に記憶があるってことは、おそ松には悪魔の記憶がなくて、チョロ松には女神の記憶がないはず。
なのに、あの惹かれようは!?
あの仲良しぶりは!?
寝る時なんて、いつの間にか隣あっている始末だし!
俺の入る隙間なんてあったもんじゃない。
唯一入り込めたのは、生まれる順番だけ。
前世の因縁はただものではないと思い知る…。
「おい、クソ松」
一松に呼ばれて、はっと顔を上げると、一松は、俺が手にしているハンドミラーを指さしていた。
「鏡の柄、ヒビ入っている。力入れ過ぎ。何やってんの?顔だけ笑顔だから余計に不気味なんだけど」
「えっ?…あ…ああ」
うっかり、思考の沼に入り込み、力んでしまったらしい。
ハンドミラーが悲惨な事態になっている。
俺がナルシストを気取り、四六時中鏡を覗くのは他でもない。
あの幸せそうな二人を見ていると、どんな形相になっているか分からないから。
だから、こうして日々笑顔でいられるよう、練習をしているわけで。
自分が犠牲になることで、あいつが幸せなら…なんて思考は俺にはない。
何故なら、自分を幸せに出来ない奴が、相手を幸せにすることなんて出来るはずないだろう?
「ところで、カラ松」
「え…」
一松が珍しく俺を名前で呼ぶから、少しびっくりした。
「あんたさぁ、前世を信じる人?それとも、前世にこだわる人?」
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