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44抗えぬモノ
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黒が戦死して一週間後
「白竜様」
自宅謹慎をしていた楊の屋敷を訪ねた白竜に
楊が深々と礼を尽くす
「畏まらないで下さい。俺はあなたを連行に来たわけではありません」
正装した白竜に連れられ
楊は宮殿に上がる
「殿下?」
黄帝の間にいたのは黄帝ではなく
凰で
「父上は急に倒れられた。よって私がその間政(まつりごと)を執り行う!」
集まった臣下達に宣言する
「いったいどういう事ですか?」
黒の戦死に
紅の謀反
仲間の裏切り
立て続けに起きる不幸に楊は混乱していて
「俺に言われても…」
白竜も同じく混乱していて
「巫子であるあなたなら何かご存じかと思いましてお呼びした次第です」
黄帝の私室には緑が警備をしており
「白竜、楊」
扉を開ける
「あー…ぁ…」
土気色の黄帝が寝台に横たわり
苦しげに息を吐く
「うっ!」
そして肉が腐ったような異臭
「こ…これは…?」
「分かりません。急に倒れられたとのことでした」
何時ものように蓮を呼び出そうとしていたとも言う
「蓮様の具合が悪いのでお断りの使者を出しましたがその時に倒れられ、そのまま臥せっておられます」
「すみません。僕にもさっぱり分かりません」
「そうですか」
黄帝の耳に出入りする虫の存在は無視した
「我らが王よ…」
「本日はありがとうございました」
楊を屋敷まで送り
帰ろうとする白竜に
「お待ちください。折角ですからお茶でもいかがですか?」
楊が引き留める
「しかし…」
「もうお仕事は終わりなのでしょう?」
潤んだ眼差しで誘う
「あの…」
「ね?今は誰も訪ねて来ないので寂しい思いをしております」
裾を掴む楊に
「分かりました」
白竜は中に入った
「わがままを言って申し訳ありませんでした」
「いいえ」
お茶を出され
口に含む
「この一週間ずっと黒の遺品の整理をしていました」
楊の屋敷に寝泊まりしていたこともあり
愛用の弓矢や
衣服
「サイコロや木札といった玩具もあって」
「…それはバクチの道具です…あいつ…楊様の屋敷にまで持ち込んでいたのか…」
緑の荷物にも紛れていた
「ふふっ…黒らしい…」
裾で口元を隠し
笑い
涙を落とす
「うぅ…」
黒が贈った首飾りが揺れる
「楊様…」
楊の側に寄り添い
泣き止むまで待った
「お帰りなさいませ緑様。白竜様はまだお仕事ですか?」
一人で帰ってきた緑を天狗が出迎える
「楊を送って行くといってました」
「そうですか。でしたら今日は帰ってきませんね」
「そうですね」
「おいおい…」
「夏呂久様。どうされました?」
「いや別に…」
「すみません。お見苦しいところをお見せしました」
落ち着いた楊が申し訳なさそうに謝罪する
「いいえ。あなたが友を想っていてくれることが嬉しいです」
優しく微笑み立ち去ろうとするが
「待ってください」
楊は尚も引き止めた
「僕は温もりがほしい。あなたは?」
熱い眼差しに
白竜は
「はい」
楊に誘われるまま手をとった
「緑」
「蓮」
手を伸ばした蓮に緑も手を握る
「緑。僕が求めているのは違うよ」
「でも…体が…」
蓮の体を気遣う緑に
「僕は大丈夫。それよりも君に触れられず愛せない方が辛い」
大きな琥珀色の瞳で見つめられると
緑は何も言えなくなり
蓮に口付けた
「君が望むならこの宝玉を君にあげる」
髪をほどき
逆鱗を見せる
「そんなことはしなくていいよ」
蓮は笑い
首に口付ける
「僕はあの愚かな巫子達とは違う」
緑を押し倒し
のし掛かる
「あんな醜い姿になるくらいなら死んだ方がましだ!」
「その誓い、忘れるな…」
外で桐が呟く
「緑は翠准将や黒准将の様にさせない!」
姉の命令ではなく
「友として俺は緑を守る!」
異形なれど
心は人間である
続く
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