アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
22.戻る日常。
-
沖縄から帰って来て中村は東京での仕事に、俺は学校と普段通りの生活に戻った。
「部屋も埃っぽい気がする・・・。そや、中村の部屋も暫く掃除してなかったな」
ほとんどの時間をうちで過ごす中村の部屋はとてもシンプルだ。とりあえず自分の家を片づけてから中村の家の鍵を取った。
がちゃり。
当たり前のように上がり込み、鍵を靴箱の上に置いた。自分の家にあるハートの籠が一緒。街を歩いてて目に入った雑貨屋さんで買ってきたら、中村も欲しいと言い出したからもう一個お買い上げ。
「・・・相変わらずやなぁ」
部屋に入って第一声がそれ。ほんまになんもない部屋。リビングにはでかいビーズクッションが一個。テーブルすらない。ここでは何か食べる気なんて更々ないとあからさまなくらい。部屋の隅を見ると箱に入ったままのルンバがある。
「一応買ったんや」
普段掃除できないだろうから、ルンバぐらい買っておけと昔なんかの話の中で出てきた。中村は食べることに必死だったから(確か夕食時やった)どうせ聞いてないと思ってたんやけど。でも、開けてなかったら一緒か。
とりあえずルンバを箱から出して説明書を見ながら充電を始める。動くようになるまでベッドルームとか掃除しよ。
「さて、ちゃんと洋服は片づけてあんのかな?」
寝室に入るとそこにもでかいダブルベッドがどんと真ん中に置いてあるだけの、何もない部屋。クローゼットが少し開いていて扉を引くと中からしわしわになった洋服がどさどさと落ちてきた。
「うわー予想通り」
もう笑えてくるね。ぐるぐるに丸まった羽毛布団と落ちてた枕を綺麗に畳んでベッドの隅に置いて、洋服をばっと広げた。さすがに洗濯はしてあるのか、柔軟剤のいい香りが鼻をついた。
中村は異様に柔軟剤の香りが好きでいつも違うのを買うのだと言っていた。今回のも違う匂い。
「匂いに敏感やもんなー。そういや、俺の香水が変わった時も誰よりも早くわかったな」
珠に怖いくらいやし(笑)
きちんと畳んでクローゼットにしまいこみ、アイロンが必要なものはうちに持って帰るように紙袋に入れた。
ほんまに生活感のない部屋。
前来たときは引っ越してきたときの段ボールがそのままやった。どうやらそこから物を取っては、その中に直していたらしい。
何考えてんだか。
雑誌が落ちてる。自分が写っているらしい雑誌を手に取るけど、その本は開かれた形跡が全くない。昔から自分に頓着が無かった。それは今でも変わらないみたいや。そのくせ俺の服や髪型にはいちいち反応を示してくれる。
「友希~その服むちゃ似合ってる!かわいい!」って。大袈裟やな~って口で言うても実は素直に嬉しかったりしてな。
寝室にはベッドサイドに置かれた時計しかない、ほんとになんにもない。そのとき時計が鳴った。
「あ、もうこんな時間。ご飯作らんと」
何にもないとは言っても、掃除を始めると風呂場やトイレや洗面所と、水周りはしっかりと時間を取られてもう六時を回っていた。
「そういや今日は仕事終わるの早いっていうてたな」
久しぶりに鍋でもしようか。沖縄で自分も多少なりとも疲れてた。温かい鍋でもして胃を休めよう。
なんや、マネージャーか俺は。とか心の中で呟いて中村の部屋を出た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 41