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37.想いは花開く。
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「友希ぃ、コーヒー淹れ・・・」
寝てる。ソファに縋るようにして静かな寝息をたててる。風呂上りのまだ濡れたままの髪が頬にぺたりとくっついて、くすぐったそうにそれを拭った。
思わぬハプニング(いや、多分作られたハプニング)で友希との撮影を終えて、社長と鈴木さんと友希と僕と食事に行ってから家まで送ってもらい、テレビを見ながらまったりとした時間を過ごしてた。友希が少し眠そうな声になってたから「寝る?」って聞いたら「ううん」って言うもんやから、眠気覚ましにと思って今日はちゃんと豆から挽いてコーヒーを淹れた。
そしてマグカップを手にしてリビングに戻ると、友希は眠ってた。
「友希、ごめんなほんま」
テーブルに音を立てないように置いてからこっそり謝るとまた小さく「ううんぅ」と友希が動いた。ソファを背もたれにしてフローリングに座っていた僕ら。僕がいなくなったことで話し相手がいなくなり眠気に襲われたのか、僕のスペースを空けたまま友希は眠りに落ちてた。
ふわふわの髪、厚い唇、ほんのりピンク色した頬。触れようと手を伸ばしてはっと気付き、その手を引っ込める。
あかん。なんかもう・・・ほんま限界。
スタッフの目に晒されながら友希を抱き締めることになってしまい、戸惑いながらも小さく震えるその肩に、守らなければという自我が生まれた。
誰も注目しなくなったテレビが騒がしく喚いてる。でもこれくらいがちょうどいい。やないと、静かになってしまうと、自分は何をしでかしてしまうかわからんくなる。
頬に張り付いた髪をそっと拭ってあげてから、そのまますっと唇を撫でた。
「あーもう・・・ほんまむかつく」
自分が。結局、勇気の一つも振り絞れない自分にムカつく。友希の唇に触れ指のその箇所をそっと口でなぞって、そんな女々しい自分に苦笑した。
「ほんまなんなん自分」
友希の隣にもう一度座ってから、ソファに預けられた友希の頭をそっと自分の肩に乗せた。ずしりと重さを感じて、友希が今だけは自分に頼ってきてくれてるような錯覚を起こして、少しだけ嬉しかった。マグカップを手に取り、一口啜ると苦味が口いっぱいに広がった。喉の奥を通り過ぎる苦さが今日の自分の感情に限りになく似ていて、なんとも後味が悪かった。
友希は起きない。よっぽど疲れたんやな。
そりゃそうか。疲れんほうがおかしいわ。あんな慣れんことやらされたんやから。
「友希」
「・・・」
「友希、ベッドで寝た方がええよ?」
「・・・う、ん・・・」
「・・・僕が連れてってもええのー??」
「・・・んぅ」
「抱っこ・・・抱き締めても、ええの?」
すぴー、すぴー。友希の鼻が鳴った。少し肩を揺すると身じろぎはするものの起きる気配は無い。肩に乗せた頭をゆっくりと下ろしてから、友希の脇の下に腕を滑らせてその腕を自分の肩に乗せた。お姫様抱っこをするようにして友希を抱え上げて、その頭を僕の胸に預ける。
部屋の明かりを消して間接照明だけになった部屋が僕の感情を揺さぶり、そのまま友希の寝室に向かった。腕の中を見下ろすと薄く唇を開いた友希。涎を垂らさんばかりにぐーすか寝てる。
可愛い。可愛い。可愛い。
どうしてこの人は僕の腕の中でこんな無邪気に眠るんだろう。
どうしてこの人はこんなに無防備に僕の前で寝顔を晒すんやろう。
どうして、僕は、この人をこんなにも大好きになってしまったんやろう。
寝室のドアをゆっくりと開いて、友希のベッドにそっと寝かせた。かくんと落ちる頭と腕。白いシーツに散らばる友希の金色の髪が綺麗に踊って華を咲かせた。
バクバク鳴り続ける心臓を一回ドンと叩いてから友希を見下ろす。
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