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その後
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プシュ
缶ビールの軽快な開閉音が響く。雛は、グビグビと勢いよく飲みあぁぁとおっさんくさい声を漏らす。
「して、話とはなんじゃ?」
遥は、メガネをくいっとあげ一旦間をおき、話し始めた。
「他人の俺が突っ込むべきではないと思うが藤花には知っておいて貰いたいと思ってな…櫂の家の事情の事を…」
「ほー?」
「普段のあいつを見ていたら想像できないと思うが、あいつは弱い奴なんだ。だから、強さにこだわりを持っている。強くなろうと努力して今の地位になったが、あいつはまだまだ強さを求めてる。それもこれも、櫂の兄の斈に問題があってな…」
(市村 斈。ヘラヘラしていたが、内に秘める物は何か異様なものを感じた奴じゃったな…)
「斈は、所言う天才という奴で何をやっても完璧だった。櫂も凡人に比べたら天才の部類になるがあいつの足元には及ばなかった。そして、斈の厄介な所が何でも1番じゃなきゃ嫌な性格な所だ。あいつは、自分が1番好かれなきゃ嫌で身近にいた櫂をライバル視していた。両親の愛でさえ自分だけのものにしようとした。何度あいつに櫂の大切な人を奪われたことか…何度あいつに殺されそうになった事か…。それでも、櫂は実の兄を愛そうとしている。一方通行なのは分かっているがどうにか打ち解けようとしている…だから、あいつは求められるままに何でも自分のものを斈に渡してきた。でも、唯一今日あいつは藤花を渡さなかった。だから、俺はお前に期待したい。どうか…どうか櫂を見捨てないでくれないか?」
真剣な表情で雛を見つめ深々と頭をさげる遥。
「頭を下げるでない。お主の思いは受け取った。じゃが、見捨てないという約束は出来ん」
遥が、顔を上げ悲しそうな表情をする。
「そんな顔をするでない。只、わしだって人だ…あいつがわしを嫌う事じゃってあるし、わしが嫌う事じゃってある。じゃから、わしがあいつを嫌いにならない限りあやつを見守る事を約束しよう」
「っ!ありがとうございます」
遥は、うっすらと涙を浮かべ高校生らしい笑顔をした。
「じゃがひとーつ!お主に約束して欲しい事がある」
「…何だ?」
「他人の事ばかり気にしてないで、お主も幸せになるのじゃぞ?わしは、それも見届けたい。それが出来ないのならこの話はなしじゃ!」
いきなりの雛の申し出にぽかーんとする遥。
「して!どうなのじゃ?出来るのか、出来ないのか?」
ぐっと遥により問い詰める。
「…で、出来る!」
「うむ。良い返事じゃ!しかと、守れよ?」
雛はニッコリと笑うとウィンクを飛ばしてきた。遥は、一瞬ドキッとしたがメガネをなおすことで平静を装ったのであった。
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