アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
VS
-
「…海斗…」
「せんせぇ…キス…したい」
海斗の手が俺の頬を撫でる。この役割はいつも俺のはずなのに、海斗は有言通りに俺の理性を試そうとしているらしい。
「海斗…ダメだ」
「どうして?…いつもせんせぇからしてるのに…」
「…あれはこういうのじゃない」
「同じでしょ…?」
「違う。これは、血が騒いでるだけだ…あれは、そういうんじゃない」
「同じだよ。キスがしたいの…ね?」
「海斗…どけてくれ…俺にもそんな余裕は…」
海斗が触れてくる度にそこからフェロモンが刷り込まれていく様で、それと引き換えに理性が吸い取られていく。
頬を滑る手が俺の顔を固定する様に両手ではさんで来た。ゆっくりと近付いてくる顔は、何度近くで見ても繊細で美しい。きっと海斗は気付いていない。自分の外見がいかに綺麗な造形をしているか。αが容姿端麗と言われる事があっても、Ωはそう言われる事はない。だが、Ωは本能で遺伝子を残そうとする生き物だから、本当のところ、Ωにも容姿端麗、眉目秀麗な人間は少なくない。海斗もまた、例に漏れていないのだ。
「海斗、やめろ…」
俺の制止も聞こえていないみたいに、また唇を舐めて妖しく笑う。そして、
「い、や、だ」
と囁くと半ば強引に唇を重ねてきた。
「海ッ…!」
「はぁ…んっんん…」
何度口づけを交わしても感じてしまうピリッとした感触。本能で繋がろうとする体がひどく反応を示している。
もっと深く、もっと強く。
そう信号を出している。
理性があればそれはいくらでも制御する事が出来たが、今のままではそれは叶いそうにない。Ωのフェロモンがどれだけの影響を及ぼしてくるのか、こんな痛烈に感じてしまうとは思わなかった。
何度も角度を変えて、舌が口腔内を蠢いて…
いつもの海斗なら絶対にしない事だ。
はぁ…と色気を纏った吐息を漏らして唇が離れていく。濡れた唇が月明かりで煌めいて、より一層の色香が漂っている。快楽に身を委ねて、まどろむ瞳もまた薄っすらと涙にぬれて小さく揺れている。
「…おまえ…綺麗だな…」
無意識だった。
上気した頬に手を伸ばせば、海斗は素直にそれを受け止めて、自ら頬をすり寄せてくる。しっとりと汗を纏っているが、それすらも俺の理性を翻弄して手から媚薬に犯される様だ。
沸々と湧き上がる熱量が体に力を与えて、俺は勢いのままに海斗を押し倒す。乗りかかっていた体が今は自分の下にあって、自分の両手の間で妖しく微笑んでいる。誘っているのは明らかに海斗の方だけど、俺はそんな海斗が嫌だと言うほどに自分のものにしてしまいたい衝動に駆られた。
「後悔するぞ」
最後までしてしまったら、きっと海斗は後悔するだろう。今はΩの発情期のせいだが、それが落ち着いた時には海斗はきっと戻れなくなってしまう。今の自分を許せなくなるだろう。
「はぁ…でも我慢出来ないよ…お願い…」
「…俺は…止めたからな」
「あっ…んんっ、ん…」
濡れた唇を無理矢理舌でこじ開けて口内を這い回る。苦しそうに鼻から漏れる息が熱くて、余計に体が熱くなっていく。混ざり合った唾液を海斗の口に移すと、小さな声を漏らしてそれを飲み下した。そんなわずかな動作にすら興奮してしまう。
こんな時、劣性と言われるΩより、αの方が余程肉食的になる気がする。
俺は、完全に海斗の誘惑に負けたのだから。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 201