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ずるい大人
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それはそれで、じゃあ俺はもう復讐は止めるとして、そしたらあの勝負も無効になるって事だ。俺はちゃんと戦えてた自信がないからちょうどいい。けど、それと恩恵を受けるかどうかの話は全くの別問題だ。
だって、昨日谷原と事に及んでしまった事は、雅の事も、復讐の事も関係のない、本能の話だ。
「勝負をしようって言った時、おまえ言ったよな。俺には何の利点があんのかって。」
「…うん。だって、俺を惚れさせたところで、何の意味もない。」
俺にはその後捨ててやるって言う、今考えたら本当に最低な野望があったわけだけど。
「あれな、おまえより俺の方がずっと有意義な勝負だったんだよ。」
「…なんで?」
そう問いかけた俺の手を谷原が握る。手の甲を親指で撫でられると、ぞくっとした。
「俺はね…おまえを番にしたいんだ。」
「……は」
谷原は俺の手を引き寄せて、手の甲に歯を立てた。少しだけ甘噛みされると、背筋をピリッと電気が走る。刺激されたのは昨日満たしたはずの性欲だ。
「昨日、抱いた時におまえの項に何度歯を立てようと思ったか分からない。昨日のおまえだったら、それも許してくれた様な気がする。あれだけ、おまえから求めて来たんだからな。」
歯を立てた場所を舐めて、上目遣いに俺を見る。昨日の事は最後までは覚えてないけど、求めたのは事実で、そんな事実が恥ずかしい。
「後避妊薬…」
「え…」
「飲むのか?」
「当たり…まえだろ…」
「…そうだよな…おまえまだ、学生だしな」
「谷原はさ、なんで俺と…番になりたいの?」
「…秘密」
「はっ?」
「そのうちな。一気に全部教えたらおまえ、俺に興味なくすだろ?」
「そっんな事は…ない…けど」
ないけど、ない、けど、俺は今、谷原をどう思ってんのかな。番になりたいって言われて、嬉しくなかったわけじゃないけど、でもそれは、俺だからなのか、Ωが珍しいからなのか、分からない。その秘密は、結構不安でしかないよ。
「なぁ…本当にうちに住まないか?」
「…いや、それは…色々、まずいだろ…」
「色々って、学校の事か?」
「それもあるし…うちの家の事だって…多分親は俺が家を出る事を許さない。」
「なんで?高校生が家を出てたってひどく珍しい話じゃないだろ。」
「だけど、雅が実家にいるのに、俺だけ出て行ったら世間はそれをどう見ると思う?Ωだから家から追い出したんだろうなんて、あの両親は絶対に思われたくないんだ。」
「けどおまえ、家ではまともに…」
「会ってないよ。顔も、声さえもほとんど聞かない。けど別にそれでいいんだ。それがうちの形なんだよ。」
「風邪を引いても、ろくに看病もしないのがか。」
「昔からそうだから。」
「だから良いって話じゃないだろ。」
「良いんだよ!それで良いんだ。」
「…海斗」
「雅も…あんたも、俺のこと見捨てないでいてくれるから、俺はそれでも平気だよ。」
俺は笑って立ち上がる。もう本当に、これ以上ここにいてはいけない。そんな気がする。
「やっぱり谷原先生は、いい人だよ。」
多分今までに見せた事はない位、ちゃんとした笑顔を谷原に向けたら、谷原はちょっと悲しそうな顔をしてた。
「じゃあ、ありがとう。また後で…」
学校で。そう続けようとしてその言葉は遮られた。気付けば谷原に抱き込まれていて、なんなら鼻が鎖骨に当たって痛かった。
「え…谷は…んっ!んん!」
見上げた途端に口を塞がれる。急な事に驚いて体を離そうとしても許されない。
「はぁ、んっ、あ…は、んぅ…」
谷原のキスはいつだって強引で、濃厚で、熱烈で、俺の体を熱くする。でも、今はこの強引さに救われている様な気さえしてしまうのは、
俺が変わったからだろうな。
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