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2 オレの名は
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『ねぇねぇ、聞いたー?広告部の早川さんて子、横谷さんに告ったんだってー!』
『えー、ヤバいねそれ!』
…朝からうっさいな。
昨日横谷に叱られたこともあって少しイライラしているオレは、ピンク色の空気を一瞥して自分の席へと向かった。
深澤汐。25歳。
横谷と同じく中野薬品デザイン部に所属している。
大きい眼、小柄な体型をしているからか、かわいい〜!とか、抱きしめた〜い!とか言われる。きもい。死ね。
身長は気にしているんだ。ちなみに、身長を伸ばすために毎日セノビックを飲んでいることは誰にも言ってない。
…裏ではこんなことをズケズケと言っているが
中野薬品デザイン部の深澤汐は、こうではない。
笑顔を絶やさず叱られても真剣に受け止め嫌な仕事も進んでやり上司の誘いは必ず行く。それが深澤汐だ。
その甲斐あってか、今月の部内の成績は過去最高の2位。地味に嬉しい。まぁはるか上には横谷がいるわけだけど…。
始業時間の八時までにはまだ時間がある。
オレは毎朝の日課であるインスタントコーヒーを淹れ、自席でくつろぐことにした。
そーいや、横谷ってこの前まで彼女がいたとか言ってたな…。それでいて早川さんっていう他部の女子から告白された…。
やっぱあいつモテるんだよな、悔しいほどに。はたして横谷に弱点なんてあるんだろうか。
そうこうしているうちに、始業のチャイムが鳴った。
オレは今日の予定を確認するために、卓上カレンダーを見る。
今日の日付けの四角い欄のなかには、俺の字…と、なんだ?この字。
力強い筆圧で角張った字。………横谷だ。
昨日オレが帰るときにはなにも書いてなかったから、昨日の夜か今日の朝に書いたんだろう。小さく書いてあるためなかなか見えない。オレは身を乗り出して横谷の字をじっと見る。
「…八時…から、会議…1階会議室…にて………」
…やばい。かなりやばい。
時計をチラッと見ると、完全にどう見たって八時を過ぎている。
やばいやばいやばい。
オレは少しぬるくなったコーヒーをぐいっと飲み干し、1階の会議室へと走った。
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