アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
真夜中のドライブ2
-
手の甲に爪を立て、伝えたい言葉を必死で呑み込む。
俯くと視界に入る黒くなった髪がイヤ。
傷みに耐え慣れた心も、流れない涙もイヤだった。
ありのままの俺を壊さないように、どんな我が儘でも受け入れる優。でもそれは、終わりが見えているからこそ出来ること。
俺の髪に柔らかく触れる優の手。
この手を掴んで、俺がハンドルを奪えば一緒に堕ちていけるのにね。
愛してる、なんて……言えない。
呑み込んだ言葉の代わりに、出てくるのはユキのこと。せいが大好きな相手、あの男の傍にいるせいは幸せそうに笑うから。
「ユキが気づいてんのは俺達のことだけで、せいのことは勘づいてないと思う。それに、あの男は分かってて何も言わないの」
俺と優の未来に勘づいているユキ。
俺が上手く笑えないのも、ランちゃんに向かい頭を下げた時も……ユキは見て見ぬ振りをしてくれた。
それがきっと、ユキの優しさ。
ユキが愛するせいの為に、俺と優が王子様と執事を演じられるように。
「星君の名前の由来、隠された本当の意味を彼奴はまだ知らないままだろう?」
「うん、せい本人も知らないからね。知ってるのは俺と両親、あとは優だけ」
「本当に、雪夜と星君に話さなくていいのか?」
右車線を走り抜き田舎道を通り過ぎれば、ネオンの光に包まれた都会がやってくる。夜中でも混雑しているこの道に舌打ちし、迷わず高速に乗り換えた優。
「相変わらず短気だね、待ても出来ない執事に躾けた覚えはないよ?」
「運転まではお前に躾けられてないからな。それより光、逃げようとしても無駄だ。話を逸らさず、俺の問いに答えろ」
「無駄なのはこの時間でしょ、何様のつもりでいるの?お前がお仕置きされたいなら話は別だけど、俺の気持ちは変わらないから」
「お仕置きか、それも悪くはないが……光は、俺にまで心を閉ざすつもりでいるだろう?」
1番大切にしたい人なのに、俺はこの手で優を傷つけてしまう。けれど、何でもお見通しのこの男は、その傷すら愛に変えてしまうから。
信用して、信頼して。
深い場所で繋がり合った時、その先に見えていたのは真っ暗な闇だけだった。
依存しているのは分かってる。
手放せなくなるのが怖くて、見えない明日に怯える日々。それを上手く隠せるのは、繕うことができるのは、この男が俺のモノだから。
「お前が選ぶ道の先に、必ず俺はいる。光、それだけは忘れないでくれ」
「笑わせないで、それならこのまま一緒に死んでよ」
「その選択ができないのはお前の方だろう。俺は光の為なら命は惜しくないんだがな……お前がいなくなったら、悲しむのは星君だ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 117