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霧島 雄大の場合
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ぎちり、と、背中で指の関節が嫌な音を立てた。
「・・・雨宮。今なら、許してやる。今すぐにこれを、解け」
霧島 雄大(キリシマ ユウダイ)は目の前に立ちはだかるように仁王立ちをする警備服の男を、ゆっくりと言い聞かせるような口調で、しかし確かな怒りを持ちながら、たっぷりと威圧を含んだ鋭い目で睨み付ける。
だが、そんな霧島を目の前の男は肩を竦めながら、霧島のその威圧すらも楽しむように鼻で笑う。
「いやぁ。俺は別に許されようだなんて思ってないッスからねぇ。つーか霧島さん、今解いたら絶対ぶん殴るでしょ?」
「当たり前だ。一発殴らなきゃ気がすまねぇ」
「こっわ!ぜってー解いてやんねーッスよ」
軽薄そうな口調の男。名前は雨宮 啓(アマミヤ ケイ)。霧島が勤めている会社の深夜警備を担当しているガードマンで、霧島とは退社間際に時折会話する程度の関係だった。
プライベートで顔を合わせたこともない。電話番号も知らない。職場だけでの薄っぺらい関係の男が、今何故か、霧島の四肢を拘束して椅子に縛り付け、その様子を楽しそうに何枚もデジタルカメラに収めている。
何度も何度も飽きもせずにシャッターを切る雨宮に殴り掛かろうと身を捩るが、細い紐が喰い込んで痛み、椅子が軋むだけで身動きが取れない。
「全然動けないっしょ?腕なんか親指を結束バンドで括っただけなのにね。人間の体って意外と思い通りに動かないモンなんすよねぇ」
雨宮が鍔の大きな制帽を、指先で軽く持ち上げながらカメラのレンズ越しに霧島を見下す。
自分が優位だと、見せ付けているようだった。
霧島をこうして拘束する時、雨宮の手際はあまりにも手慣れていた。
仕事終わりに突然警備室に呼び出され、入ったと思えば背後から襲い掛かり全体重を乗せてのしかかられ、後は手際良く手脚を纏められて椅子に固定された。
雨宮よりも霧島の方が一回りもガタイは良かったのに、計画的に不意を突かれては、柔道経験者の霧島も為す術がなく、簡単に拘束される。
本当に油断していた。だがまさか、こんな浮ついた口調の若い同性に襲われるだなんて、誰がいつ、考えるだろうか。
染色と脱色を繰り返し毛先だけが妙に明るくなった髪を浅く被った制帽から覗かせ、ピアスはしていなくても目立つほど両耳にピアス穴をいくつも開け、細身だがしっかり身体は鍛えている見るからにオンナ好きそうなチャラついた20代前半の男が、霧島のようなスーツを着ていてもガタイの良さが際立ち、地黒の肌と強面な顔の作りから雄臭さしか感じない40歳手前の男を襲っている光景は、異質だ。
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