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それでも、どこか前回の事を引きずっているのか、お互い言葉は少なかった。
防犯カメラも録画していない(って、大丈夫か?)との事なので、僕は黙々と雑誌を立ち読みし、コジマさんは黙々と何かの作業をこなしていた。
暫くすると、来客を知らせるチャイムが鳴った。
「ぇらっしゃーやせー。」
コジマさんのやる気のない声が響く。
気配のする方へ、何気なく視線を向けると、例の女子大生らしきコがちょこちょこと小走りをしている姿が見えた。
動揺してしまう自分がもどかしい。
彼女は、僕なんかにわき目も振らず、弁当の棚で期限切れの商品をカゴに入れるコジマさんの方へと近づいていった。
仕草の一つ一つが可愛らしい。
遠目からでも手入れされている事がわかる、指先がコジマさんの背中に触れた時、何故か鳥肌が立った。
コジマさんが笑顔で振り返る。
そして、二人は楽しげに話し出した。
無性にイライラする。
それでも、二人から視線を外せずにいると、急にコジマさんが僕を指差しながら、こちらを見た。
その指先を追うように、彼女も振り返る。
僕は慌てて、漫画雑誌に顔を視線を落とした。
それから、彼女が出て行くまで、顔は上げられなかった。
恥ずかしながら、手元は一ページも進んでいない。
「ひー?」
突然、頭上から声が降り注ぎ、僕の肩がビクリと跳ねた。
恐々と声の方を見ると、コジマさんが真顔で立っていた。
「もう、そろそろ閉めるから、一旦、出てくれる?店長来るし。」
さっきの説明は何もなしかよ。と、思ったけど、それを言うと、負けた気がするので、言わない。
「じゃあ、レジ打ってー。」
と、カゴを差し出す。
コジマさんは、それを一瞥すると、ふっと小さく息を漏らした。
多分、いつも買う500ミリペットボトルではなく、1.5リットルのペットボトルが入ってる事が嬉しかったのだろう。
わかりやすい。
って、僕も相当わかりやすいけど…
お菓子とかも、明らかに一人で食べるには多いし。
「なに?甘えてるの?」
カゴを受け取りながら、コジマさんが笑う。
それが癪だったから「そうだよ。」と答えてやった。
てっきりまた、鼻で笑われるかと思ったら、口元を押さえて、湧き上がる笑みを必死で隠してる感じだった。
それが、なんだか嬉しい。
コジマさんも、紅くなったりするんだ。
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