アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*76*
-
コジマさんの手が、僕の頭に乗せられる。
そのまま、優しく僕を撫でながら「ごめん…」と再び口を開いた。
「わかったなら、いいよって、納得出来るくらい、俺も大人じゃないんだよね。
ひー君は、俺がひー君の事、好きだってわかってる?」
「ううん……なんで、僕…って事ばっかり考えてる……」
「うん。それと同じで、俺も、ひー君が俺の事好きだって言ってくれても、どこか信じられないんだ。ごめんね。」
「なん……で、イーサンが、謝る…の…?」
「だから、言ったじゃん。これは、俺の下らないプライドで、俺のわがままだって。」
「それ…わ…かん…ない…」
「だから、そいつの代わりは嫌なんだよ。本当にわがままだけど、ひー君の気持ち、確かめて来て欲しい。」
「僕の…気持ち?」
「うん。本当は、絶対行かせたくないとか、そいつの代わりでも、そこに漬け込んで、ひー君を自分の物にしたいって、気持ちもめちゃくちゃある。
だから、無理矢理、変な事しちゃったり、強引な事して引っ張ったりもしちゃう。」
「無理矢理だなんて…」
「でも……今は、信じられないかも知れないけど……本当に、一生一緒に居たいって、思ってるんだよ。俺…
だから、そんな風にあいつの代わりでいいよって所を妥協しちゃったら、ひー君が俺を本当に好きになってくれた時も、その気持ちを信じられなくなっちゃう。
それは、絶対嫌なんだ。
ひー君がいくら違うって言っても、俺の中では、一生、そいつの代わりだって気持ちが消えないと思う。」
「だから……片付けて来て……って言ったの?」
「うん……ごめんね。わがままで…」
胸が苦しい。
こんな時に、どんな顔をすればいいのかわからない。
コジマさんのわがままは、正直迷惑だ。
言いたいことはわかる。
でも、そんなのどうだっていいじゃん。
僕の気持ちを信じてよ。
とも思うけど、その迷惑なわがまますら、今は愛しい。
「ありがとう。ちゃんと、説明してくれて…ちゃんと、言ってくれないと、僕、わからなかった。
それに、昨日はちゃんと聞けなくてごめん。」
溢れ出す涙を拭いながら、僕は、コジマさんを見つめた。
コジマさんも少し、泣きそうになっている。
嫌だ。
泣き顔なんて、見たくない。
僕は、コジマさんを抱き締めた。
身長差があるから、抱き付いたって感じに見えるだろうけど、抱き締めた事にさせて欲しい。
コジマさんの手が背中に回されて、心地の良い熱が全身を包む。
この後に及んで、なんで、コジマさんなのか?と思う。
コジマさんが言った通り、なんで、レイとはこうなれなくて、レイなんかよりも全然知らないコジマさんにこんな気持ちを抱くのかとも思う。
コジマさんが大人だから?
気持ちを真っ直ぐに伝えてくれたから?
セックス紛いの事をしたから?
本当にレイの代わり?
どれも、当てはまるから、怖い。
だから、僕も僕の気持ちをきちんと確かめなくてはいけないと言う気持ちもある。
それでも、レイに会うのは嫌だって気持ちも強い。
最低かも知れないけど、面倒臭いって根本で思ってる。
僕の事を好きだって言ってくれるのも、まだ俄かに信じられないところもあるし——
「イーサン……お願い。少しだけ待って。
本当にごめん!ごめん!
でも、即答出来ない。ちょっとだけ考えさせて。」
腕に力を込めながら、僕は言った。
応える様に、コジマさんの腕にも力が込もる。
「もー、すげぇガッカリ。そこは即答して欲しかった…」
「うん。でも…僕だから。」
「開き直ってんじゃねぇよ。」
「うん。ごめんね。」
「いいよ。片付いたら、たっぷり酷い事してやる。」
ビクっと身体が反応してしまった。
「変態…」と、意地悪い声が聞こえる。
はい。変態です。
「だから、片付くまで…つーか、俺が納得出来るまで、絶対ヤらない。」
「なんで、そこに繋がるのかがわからない。」
「なんつーか、願掛け?」
「なんだ、そりゃ…」
「でも、持ちそうにないから、早くして下さい。」
「わかりました。検討します。」
「検討じゃねー!つーか、絶対、流すなよ!これ、本気で流すなよ!?」
急に僕の身体を引き剥がし、コジマさんは肩をガックンガックンと揺らした。
「わかった!わかってる!ちやんとやる!」
「おっ、やるって言ったな!今の言葉、ちゃんと記録したからな!」
「どこにだよ。」
「俺の心のICレコーダー。」
「あんまうまい事言えてねぇよ!」
いつもの調子に、顔を見合わせて笑いあう。
そして、どちらともなく、僕たちはキスをした。
「寝よっか。」
唇が離れると同時に、そう笑う顔が愛おしい。
レイの代わりなんかじゃない。
そう言ったって、今は信じてもらえないんだ…
それが、悲しかった。
それなのに、レイと会う決心がまだ、つかない自分が、凄く嫌だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
76 / 119