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*94*【レイに会うよ①】
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レイと会う日は、意外とすんなり決まった。
その間のやり取りは、コジマさんに包み隠さず報告している。
何度も「あー、やっぱ、こんな事やめりゃ良かったー!」とか、「行っちゃいやー。」とかグダグダ言われて、ちょっといい気分になる僕って、性格悪いのだろうか?
結局、一週間もしない内に、レイの最寄り駅にあるファミレスで会うことになった。
コジマさんはその日、わざわざ友達にビッグスクーターを借りて、バイト上がりに迎えに来てくれるらしい。
「ってか、そんな時間まで居ていいの?」
と、調子に乗って聞くと、
「いやだけど、最後の仕上げに、会っておきたい。」
とか言うから、また堪らない気持ちになった。
当日、レイのバイト上がりに合わせて、待ち合わせは夜の10時半。
その日は、僕は特に何もなかったので、夕方から出掛けて、一年程過ごした街をブラブラと散策した。
たかだか一年前の事なのに、何年も訪れて居なかった場所に戻ってきた様な懐かしさがこみ上げて来て、少しおかしかった。
そのせいもあってか、自分でも不思議なくらい余裕だった。
しかし、早めに入ったファミレスで、ひたすら待ち合わせの時間を待ってると、時間が過ぎるにつれ焦りが高まっていった。
「ごめん。待った?」
『帰りたい…』と甘えたメッセージをコジマさんに送ろうか送らないか悩んでいる時に、声をかけられて、慌てて顔を上げると、僕の予想を全て裏切る笑顔がそこにはあった。
なんと言うか……普通。
本当に何事もなかった様な、普通の笑顔。
すっかり拍子抜けした僕は「久しぶり…」と、小さな声で言うのが精一杯だった。
「何慌ててんだよ?」
ふっと小さく吹き出しながら、レイが対面に腰掛けながら、「それ、例の好きな人?」と、僕が咄嗟にスマホの画面を隠した手を指差した。
「えっ!?いや、あははは。」
ぎこちなく笑いながら、僕は手を退ける。
妙に緊張してるのは、多分、僕だけなのだろう。
レイは、その話すら広げる事もなく、立てかけてあったメニューに手を伸ばす。
「ちょっとごめん。俺、めっちゃ腹減ってるから、結構、ガッツリ食っていい?」
「あ、どうぞどうぞ。」
「え?ひーは、腹減ってないの?ファミレスくらい奢るよ。」
「あっ、えっ!?あー、僕も、なんか食べようかな?」
唐突や名前を呼ばれた動揺を隠すために、僕も立てかけてあったメニューを取る。
昼食を簡単にファストフードで済ませた依頼何も食べて居ない。
待ってる時もドリンクバーだけだったので、お腹は空いているのだが、食事メニュのー写真が目に入ってくるなり、なんとなく吐き気を催してしまった。
逃がすつもりで、視線を少し上げると、当然、レイが目に入ってくる。
メニューを真剣に選んでいた。
ふと、ちょっと変わったな…と言う事に気づく。
高校の頃から、少し長めで、明るい色のパーマだった髪型はすっかり落ち着いたダークブラウンで耳が出るくらいの短さになっており、服装もいかにも大学生と言った感じだった。
彼女の趣味かな?と思うと、少しホッとする。
もちろん、ファッションは変わっても、人懐こそうなパッチリとした二重まぶたや、少し主張し過ぎな鼻なんかは変わって居ない。
一年でそんなに変わる奴なんていないだろうけど、そこにも、ホッとしてしまう僕がいる。
視線に気づいたのか、レイが視線を上げた。
慌てて、メニューで顔を隠す。
「決まった?」
レイはそんな僕に、気づかないふりをしながら、そう聞いてくれたが、元々優柔不断な僕が、そう簡単に決断出来る訳もない。
「ごめん。ちょい待って!」と言う僕に、嬉しそうに笑う。
「ひーて、こう言うの本当に時間かかるよな…ゆっくり選んでいいよ。」
その言葉に、このファミレスには、居候していた頃に、よくきていた事を思い出した。
いつも僕が
「コレとコレとどっちにしよう。」
なんて悩んでいると、
「じゃあ、俺がコレにするから、半分ずつにしようぜ。」
と、レイは言ってくれていた。
今、思うと、相当気を遣ってくれていた事がわかる。
「ごめんね…」
ほぼ無意識的に、そう口から出ていたが、その意味など気付くはずもなく、レイは「いいって」と言って、もう一度笑った。
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