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皮肉も込めた曖昧な言い方だけど、そう言えばわかると思ったのに、奴は照れていると言う感じでは全くなかった。
それどころか、頭の上に沢山?マークを浮かべた様な顔をしている。
僕の言葉の意味が通じなかったのか、予想が完全に外れたのかわからない。
いや、この予想はかなり確信に近いんだけどな…
「あれ?たまに来る女の子に本当は言うつもりなんじゃないの?あの女子大生っぽい…」
やっぱり冗談かよと、胸を撫で下ろした時に浮かんだのは、僕と誰かを重ねているという事だった。
奴の交友関係は知らないが、僕と同じ状況と考えると、一人思い当たる人物がいる。
恐らく奴に好意を抱いているだろう女子大生風のお客さんだ。
しかし、そこは客と店員。お互いいい感じだと思っていても中々踏み出せない気持ちを僕をからかう事によって発散しているのではないか。
そう思うと、非常に合点が行くと思ったんだけど…
「はあぁぁぁあ?」
下から舐めつけるように奴は僕を睨みつけた。
めちゃくちゃ不細工な顔だった。
「うはっ!めっちゃブス!やめな!やめな!めっちゃブスだよ!」
すっかり気の緩んだ僕は、豪快に笑った。
その顔は、どう考えても、僕を笑わそうと思ってやったとしか思えないから遠慮なく笑ったのに…
いつもなら、奴も一緒に「マジで?」なんて言って笑う所だが、一向に奴の笑い声が聞こえない。
「えっ?…怒った?あ、えっと…ごめん…」
急に不安になって笑いを引っ込めるが、奴は神妙な顔のまま答えない。
マジで怒ってしまったのだろうか。
ブスなんて言って、本当は僕が思う程、奴はナルシストだったかも知れないし、野暮ったらしくあの女の子の話を出したのがいけなかったのかも知れない。
何れにせよ、これ以上謝ったとしても墓穴を掘りそうなので、僕は黙って奴の出方を待った。
「じゃあ、なんつったら信じられる?」
奴が呟く様に言った。
「好きとか、そんなんはまだお前の事、よく知らないから適当に言えないけど、ずっと一緒に居たいって思ったのはマジなんだけどな…」
いつものニヤけ顔を忘れてしまったかの様な真剣な顔に、僕は息をのんだ。
なんと答えればいいのか、全く思いつかない。
奴の言いたい事はわかる。
僕だって、少し話した事ある女の子やプライベートなんか全く知らない芸能人などに、こんな子と結婚したら幸せかもなと、漠然と思った事はある。
女の子が『彼氏と結婚相手は違う!』なんて言ってるのも聞いたことがある。
その境目は僕にはわからない。
きっと奴にはあるのだろう。
だからって、好きって告白じゃなく、突然結婚してくれってか?
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