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しかも、男相手に…
とは、言えない。
というより、言いたい事はわかっても、やっぱり自分に向けられた言葉として捉える事がどうしても出来ないのだ。
どう返せばいい。
一昨日や、ついさっきまでの雰囲気だったら、笑って誤魔化す事が出来たのかも知れない。
しかし、今はとてもそんな雰囲気ではなかった。
どうしよう…と、視線を泳がせていても、救いの言葉が落ちている訳もなく、つい押し黙ってしまった僕を助けるように、来客を知らせるチャイムが店内に響いた。
その場の誰もがすぐに反応出来なかった。
ふわふわとした感覚のまま、出入口に視線を移すと、件の女子大生風の子が立って居た。
僕らの雰囲気にただならぬものを感じたのか、ドアを半開きにしたまま固まっている。
気付いた時には、僕はその傍を駆け抜けて居た。
店を出た時、女の子にぶつかってしまった気がしたが、振り返っている余裕はなかった。
一昨日より無我夢中で走っていたせいか、すぐに息がきれた。
然程走ってもいないのに、僕はハアハアと喘ぎながら速度を緩め、終いには両膝に手を付き項垂れる様に立ち止まった。
暫く肩で息をした後、ふと顔を上げて見ると、前方には頼りない街路灯の光が等間隔に照らすひと気のない道が続いている。
そこで、ようやく気付いた。
ああ…僕は、また逃げ出してしまった。
と…
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