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あれから、コンビニに行っていない。
いや、正確には行けていなかった。
どれだけ僕は打たれ弱いのだろう。
あの夜から熱を出し、寝込んでしまったのだ。
せめて、あの時、何か買い込んでおけばこんな辛い状況にはならなかったのだろうが…
逃げ出した報いと言うべきか、自業自得と言うべきか、数日を水分だけで過ごした。
どこからが夢でどこからが現実なのかも定かでないくらい魘されながら、ふと頭に浮かぶのは奴の事ばかり。
もう、あのコンビニには行けないな…
なんて、そう思っていたが、逃げ出した報いは熱を出したくらいでは済まなかったらしい。
熱が引いて、やっと学校へ行く事が出来るようになったその日。
どうしても再びあのコンビニにいかなくてはいけない用事が出来てしまったのだ。
電車に乗ろうとカバンのポケットを弄っていると、いつもの場所にパスケースが入っていない事に気付いた。
念のため他の場所も探して見るが見つからない。
部屋に置いてきただろうかと、記憶を巡らせてみて、ハッと気付いた。
そう言えば、あの日、コンビニのポイントカードを出すために一度パスケースをカバンから出したのだと。
そして、カウンターに置いたまま、僕は店を飛び出してしまったのだと。
今から取りに行ったら、確実に講義には遅れるだろうし、今日はバイトがあるから、帰りはいつもの時間になってしまう。
となると、また奴と顔を合わせる事になる。
非常にばつが悪い。
確か、奴の次の公休は多分木曜日だ。
あと3日それまで待つか?
いや、それでは何かと生活に支障が出てくる。
それにシフト変更とかあって、鉢合わせなんかしたら益々気まずい。
わざわざ公休を狙って来た事はバレバレだ。
電車に揺られている時も、講義を受けている時もバイト中も、ずっとこのことを考えていた。
お陰でまた、熱が出そうな気がする。
もちろん、こんなに悩むことでも無いじゃないかとも思った。
無理なら無理と、言えばいいだけの話なのだから。
それでも…と、悩みを堂々巡りさせている内に、僕はコンビニの手前にある横断歩道を渡らずにただ立ち尽くしていた。
時間はいつもの時間。
奴は居るだろうか…
自然と視線が店内へと向けられる。
しかし、ここからではよく見えなかった。
悩みは解決しないまま、僕はただ立ち尽くすことしか出来ない。
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