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出会い
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中学3年になった新学期
桜の花びらがまだかろうじて残っているようなそんな季節
ホームルームが始まり、先生から僕たちはある大きな話をされた
「転校生を紹介するぞ」
ぼんやりと窓の外を眺めていてクラスメイトとワンテンポ反応が遅れてしまった僕はみんなに合わせるようにあわてて目線を教壇に向けた
「新しいクラスメイトだ。みんな仲良くするように」
先生の大きく太い声が教室中に響く
それに続いてガラリとドアが開く音がした
こんな受験の最後の年に転校生が来るなんて!
クラス中がざわめいてみんなの視線はその人物だけに注がれた
先生に促されておずおずと黒板に名前を書いて、振り返ると同時に指先についたチョークの粉をズボンにこすりつける
「柏木 由希也です。どうぞよろしく」
頭を下げた彼の声は少し震えるようで緊張しているのが後ろから二番目の列の僕まで伝わってきた
顔をあげた彼の顔にはひきつった笑顔が張り付いている
日に当たるとうっすら茶色に透ける髪
華奢で線の細いような体にすらりと伸びる手足
遠くからでもわかる整った顔立ち
こんなこと男に当てはめていいのか分らないけど....なんて言うかとってもきれいな男の子だった
みんなザワザワ何かささやいていたけれど僕が思うに大半は彼のきれいな見た目のことに違いない
チラリと周りを見渡すと今までクラス内でイケメンだともてはやされていた男子たちもなんだか悔しそうな表情を浮かべていた
先生は教室中をぐるりと見渡してから一層大きく声を張り上げた
「えーと…席は・・・佐藤!佐藤 歩!!」
「はっ、、、はい!!」
ガタ!!
急に名前を先生から呼ばれて僕は反射的に立ち上がる
勢いが良すぎて椅子を後ろに倒しそうになって後ろの奴がそんな僕を見てクスクス笑った
「柏木、あいつの隣な。佐藤はクラス委員だからわからないことは教えてもらえ」
先生は柏木君の背中をバンっと叩いて僕を指差した
彼はおずおずとみんなの間を縫ってこっちに向かってやってきた
その後ろから先生はやっぱり大きな声で今度はクラス全員に呼びかける
「おーし!柏木に聞きたい事もあるだろうけど、それは休み時間にな! 授業だぞ!授業!」
バンバンと教壇を叩き、転校生に向けられた注意をいつもの日常に戻そうとする
先生に怒られるのは嫌だけど、でも気になる!なんて視線を一心に浴びながら彼は僕の隣の席までやってきた
「えっと、、、佐藤君だよね?よろしくね」
「あ、、、うん! こ、、、こちらこそよろしくね」
人見知りの僕は気の利いた言葉一つかけられないでドギマギと返事をした
彼は席に座り”ホゥ...”と一つ軽いため息を吐いた
彼が抱えた緊張感は僕にまで伝わってくる
何かいってあげたほうがいいのかな...でも何を言えば!?と横目でチラチラ僕は何度も彼を見てしまった
それに気づいたのか彼は目尻を細めて柔らかく笑ってから体を僕の方によせてきた
「え...な...なに?」
いきなりのことで僕はびっくりして声が裏返る
すると彼は僕の耳元で小さく囁いた
「あのさ...教科書見せてもらってもいいかな...」
そうか...教科書まだなかったんだ..
慌てて僕は教科書を彼の方へと向けた
けれど僕と彼の机の間は少しだけ離れていた
彼に見せようとすると自分が見づらくなるような中途半端な遠いようで近い距離
「あ...じゃ机くっつけようか」
僕はガタつく机を柏木君の机によせて教科書を本当に半分ずつになるように自分と彼の前に広げた
「わざわざどうもありがとう」
そういって申し訳なさそうに柏木君は笑って教科書に目線を落とす
パラパラと教科書をめくりながら聞いてくる
「こっちって、どこまで授業いってるの??」
「あ...えっと...このへんかな...」
二人で一つの教科書をのぞきあう
窮屈そうに彼が動けば肩が重なり、袖が擦れた
そのうち彼はうんうんと納得するように頷いてホッとするようなため息を漏らした
「あぁ...よかった!何とかついていけそう...」
「そ...そっか...よかったね。あ...そっち狭くない?大丈夫?」
彼が遠慮しながら筆記用具を机に置いているから落ちてしまいそうで僕は思わず声をかけた
「あ、、、うん、ありがとう」
落ちてしまいそうだった筆記用具を机に置きなおして教科書の文字を追いかける
その横顔はやっぱりきれいだったから
授業を真剣に聞くフリをして何度か彼に目を向けた
うちの学校の女子よりきれいなんじゃないのかな...
ふと気づくと斜め前の女子がチラチラと彼見ていた
その隣の女子も何度か振り返りコソコソと内緒話をしてる
みんながみんなそわそわして教壇上の時計を気にしている
休み時間まではあと30分
これは大変だ...柏木君トイレにも行けなくなるよ...
真剣に授業を受ける柏木君の横顔に向かって僕は困ったような顔を向けた
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