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アルバイト
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「んー!いちぢく美味しい!」
幸せいっぱいに、薄い皮ごと頬張ったいちぢくに破顔する。狭いテーブルを挟んで座った風太は、はいはいと頷きハンドタオルで壮琉の口元を拭ってやった。
日曜日の午前中。のんびりと迎えた朝だが、昨夜のあれこれに対する照れなど吹き飛ばす通常運転の壮琉。もしかしたら、欲求不満故の夢だったのではないかと、風太は少し疑っている。
「なあ、アルバイトとかする気ある?」
トーストにマーガリンを塗りながら聞く。
「ん?えっと、働くって事?」
「うん。もし長く…ここに居るんなら、せめてアルバイトをしてもらいたいなぁ、とか。」
風太的には、ヒモで生計を立てていたこの男を世間に出すのは少し、いやかなり大変だとは思う。しかし、己の財力のみでこの先やっていくのはきつい。
「…それって、どうやって探すの?」
小首を傾げ、嫌がる素振りも無く聞いてくる。お、案外大丈夫か、と風太は目の前の容姿を見て少し思った事を呟く。
「髪を切ったら、直ぐにでもアルバイト先見つかりそうだよなぁ。近所のコンビニとか募集してたけどさ、難しいかな。」
「髪?」
さらりと肩を流れる髪を一房持ち上げて、壮琉は軽く振った。でも似合ってるしなあ、とか噛みついたトーストを咀嚼しながら風太が考えていると、辺りを見回し席を立った壮琉が包帯と一緒に置いてあったハサミを手に取る。
ジャキ、
はらはらと舞うミルクティー。音も無く床へと降る。
「っ?!おいっ!止めろ!」
風太は血相を変えてトーストを放り出し、テーブルを斜めに蹴飛ばしながら立ち上がる。コーヒーが少し溢れるが気にせず、素早くハサミを取り上げた。
「どうして?髪を切った方がいいんでしょ?」
「いや!いやいやいや!」
しかし無残にも切られた髪は元には戻らない。片側だけ耳下の長さで、ざっくり切り口をさらした前衛的な髪型になっている。
「はあ……美容室行こうな。」
「?どうしたの、風太。そんなにがっかりして。あ!いちぢく食べる?とっても美味しいから元気になるよ。」
「いや、いい。大丈夫。ちょっと思った以上に、俺はこの髪が好きだったんだなって気付いてしまっただけだ。」
「ふうん。また伸びるよ、元気出して。」
そう言って壮琉は微笑むと、背伸びしてちゅっと風太の唇へキスした。
「…元気出た。」
昨夜のあれこれは淫夢では無かった。思わず風太の頬が緩む。
「ふふ、ごはん食べよ!」
手を引かれるまま、風太は再び斜めになったテーブルの前に座った。
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