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秘書
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秋吉がノックし許可を得てから応接間に入ると、満面に笑みを浮かべた彼は速やかにソファーを立ち、大股で颯爽と歩み寄った。青い瞳が輝き、巻き毛の黒髪が揺れる。
「ああ、セツ!とても会いたかったよ。相変わらず、素晴らしい美しさだね!」
ふわっと甘酸っぱいリンゴにシトラスが混じる香に包まれる。スーツ姿の男性に情熱的なハグを受けた秋吉は苦笑した、これが彼の普段からの振る舞いだ。
「おはよう、アルバーニ。」
「いつも言ってるけど、君にはルーカと名前を呼んで欲しい。」
「…そうだったね、ルーカ。」
「そうだセツ。久し振りに会えたのだから、再会のキスを受け取らせてくれ。」
さあ、とハグしたまま頬を差し出してくる。
「おい!さっさと移動するぞ!」
ぐいっと菊嘉が割り込む。体型的に劣るので、思ったほどの効果は出なかったがアルバーニはしぶしぶ秋吉を放した。
「まったく、ボスはせっかちでいけない。そんなに気が短いとモテないですよ。」
右手のひらを上に向け、肩をすくめる。ぴくり、菊嘉のこめかみに苛立ちを見て取り、秋吉はそっと下がり先程閉めたばかりの扉を開く。
「急ぎましょう。私のせいで時間が押してるのでしょう。申し訳ありません。」
ふんっ、と菊嘉がアルバーニの側を過ぎて扉へ向かう。秋吉の横で少し足を止めた。
「別にお前のせいではない。そもそも、呼びもしてない奴が勝手にやって来るからいけないんだ。秋吉、荷物を持って来い。」
再び靴音も荒く、そのまま玄関へ行ってしまった。
「セツも子守が大変だね。私が来れて良かった。これで君の負担は軽くなるだろう。」
今度はアルバーニが秋吉の隣に立ち、ウインクする。せっかくのアルバーニの気遣いだが、秋吉へ対する当たりのきつさは薄れそうもない。むしろ余計に強まりそうでもある。
近年、秋吉の体を求めるようになってから、菊嘉は亡き父親の存在を殊更気にしている。彼の持つ能力に対しまだ歳若い体は、社会的な認知や、肉体の発達において未熟な部分が多い事も苛立ちの一因だ。
「負担には思っていません。大丈夫ですよ、ルーカ。」
「セツはヤマトナデシコだ!」
胸に手を当て大袈裟に感動する。彼の熱いアプローチは会えばいつもの事で、彼は性別などに拘らず美しいものを心底愛している人間だ。
「ルーカ、大和撫子とは女性を意味する言葉です。私は男なので該当しません。さあ、行きましょう。」
衣類などを詰めたトランクを廊下へ寄せていた。秋吉が手にするよりも前に、自然と大きい荷物を引き受けたアルバーニはやはり紳士的なのだ。門前に待たせていたタクシーを玄関へ着けさせ、三人は別荘を発った。
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