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みどりは、俊介がレポートにとりかかるために、図書館に辛そうに向かっていったのを見送る。
教室の窓から外をみると、太陽が雲に覆われ、じめじめとした雨の匂いがした。
傘をもってきていないことに、ため息をつく。仕方ない、降ったら売店で買おう。
俺は、次の授業を受けるために移動の準備をした。
案の定、帰る頃にはゴロゴロと雷が遠くでなる音がし、雨がしとしとと降っていた。
周りの学生も、傘を持っていない人が多く、愚痴ていた。
雨が降るまえに、俊介は、レポートをぎり間に合わせ、授業をさぼり先に帰っていた。
売店に向かおうとしたとき、スマホに着信があった。表示をみるときいろだった。
「もしもしもし。」
電話にでると、きいろのおどけた声がした。
「どうしたの、きいろ」
「雨降ってるじゃん?みどり、傘忘れてたの気づいてさ。ふふふ、俺どこにいると思う?」
きいろは、嬉しそうに尋ねてきた。がやがやと電話越しに声が聞こえた。
もしやと思った。
「みどり、迎えに来たよ。俺、どこにいるかあてて。じゃあね」
俺がなにか言う前にきいろは一方的に電話をきった。きいろは、俺の大学に来たことはない。どうやって、来たのだろう。それより、迷子になっていないだろうか。俺は考えるより先に体が動いていた。
俺の大学は、私立の薬科大学ということもあり、そんなに広くはない。きいろのことだ。外にいるのだろう。なんとなく思いついたのは、今は咲いていないが、春になると花をつける桜の木が並ぶ坂道だと思った。
雨に濡れるのも気にせず、走りだす。女子大生四人組が通りかかった。
「さっきの子、芸能人かな。すごく綺麗だったよね。なんかみんなぎょっとして見つめてたし。雨の中誰待ってるんだろ?」
俺は思わず彼女に話しかけた。
「すみません、そのこ、どこにいますか?」
彼女は、坂道の下を指先した。
俺は、軽く礼をいい、走り出した。
下っていくと、見慣れた暗い緑色の傘をさしたその姿をとらえた。
「きいろ!」
俺の声が聞こえたのか、きいろは振り返り手を振ってきた。
「はあっ、なんできいろがここにいるんだよッ」
きいろは、首を傾げながら笑った。
「みどりに、傘届けに来たんだ」
そう言って、黄色のやたら目立つ傘を差し出してきた。
「きいろ、探して歩いてたら、もうすでにびしょびしょになっちゃったよ」
俺は思わず怒るよりも笑ってしまった。
「久々にかくれんぼしたかったから」
きいろは、やっぱり変なやつだった。
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