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「自分がどれだけの事をしたかってことは分かっているよね」
彼は無言で小さく首を縦にふった
「たくさん言わなきゃいけないことはあるけど、今ここで君を責めても何にもならない。だから怒らないよ」
「...でも」
言いかけてからまた口を紡ぐ彼の背中に手を添える
彼は背中に置かれた椎名の手から伝わる温かさに心に沈んだ重いものが少しだけ軽くなったような気がした
今なら絡まった自分の思いを素直に言える気がした
ほかでもない椎名になら聞いてもらえるような気がした
「先生...やっぱり俺は頭おかしいのかな」
「え?」
「ダメだって分かってるんだ...傷つけたくないって、泣かせたくないってそう思うのに...気づくといつも目の前にはユウが転がってる」
彼が目を閉じると瞼の裏には笑顔いっぱいの少年の顔
けれど一度瞬きをすると次に浮かぶのは涙目で顔を引きつらせた顔が映る
「みんな俺をそういう目で見てきたんだ、次は何をするんだろうって...こいつは次は何をしでかすんだろうって」
握りしめた手にだんだん力がこもっていく
怒りにも似た感情が心の奥から湧き上がってくるように彼は声を荒げていく
「両親でさえも俺を怖がってたんだ」
だからみんな離れていった
怖がって近寄らなくなってみんな消えてしまった
どうすればいいかなんて分からなかった
誰も教えてくれなかった
だから無条件で傍にいてくれるものが欲しかった
あの猫だって本当は好きだったんだ
大事にしたかった
でもどうすればいいのか分からない
ユウはいつも泣きながら俺の後を追いかけてくれる
縋ってくれるのがうれしくて自分を許してくれるのがうれしくて傍にいればいるほど閉じ込めてしまう
自分勝手で理不尽な理由だった
口に出せば自分自身でさえ嫌悪するような言い訳を彼はひたすら椎名に訴える
椎名はそれも彼が話し終えるまでずっと聞いていてくれた
背中の手は一度も離れることはなかった
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