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不信感
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いきなり自分の頭に熱々の紅茶をぶっかけた大原くんに僕は驚いた。
「え、お、大原くん大丈夫!?」
「お前なんか、嫌いだ」
「聞くから!ちゃんと後で聞くから拭いて!」
急いでお風呂場からタオルを持って行って茶色に染まった髪にかける。
熱々だったから火傷してるかもしれない。
「だから、」
すると大原くんは携帯を出して、
「追い出してやる」
僕のところまでかすかに届いてきたコール音。
どこにかけているのだろう?
まさか、理事長……?
「待って、大原く…」
「…、真人っ!助けて!!遥が!!」
僕の制止が言い終わらないうちにに大きな声で大原くんは叫んだ。
いま、なんて言った?
真人…?二ノ宮くんを呼んだの?
ピ、とケータイを切った大原くんがこちらを向いた。
ニィ、とその顔は歪んでいる。
遠くからバタバタと走ってくる音が聞こえる。
「これで遥も終わりだね」
大原くんが二ノ宮くんに向けるのは異常なまでの執着心。
けれど何故僕を憎む?
何故そんな目で僕を見るの?
二ノ宮くんは、僕のこと嫌いなはずだ。
ドンドンと扉を叩く音が聞こえる。
「大原!大丈夫か!?鈴原いるのか!?開けろ!!」
反射的に、開けようとした身体が止まった。
開けて弁解すればいいのに、開けてしまえば?
どんな目で君は僕を見るの?
止まった僕の目の前で、大原くんはブチブィっとシャツのボタンを飛ばした。
「なに、やってるの……」
そのまま僕に背を向けてドアまで走っていくと、
「ダメっ!」
ガチャ、と開けたドアの向こうにいた二ノ宮くんに抱きついた。
「真人っ!!!」
二ノ宮くんの腕の中にいる大原くんは震えていた。
ブルブルと、目に涙をためて。
「大原…、お前まさか……」
君の瞳には僕はどう映っているのだろう?
「いきなり呼び出されてっ、そしたら遥が!!」
「違う!!」
気がつけば、騒ぎを聞きつけてからか周りには生徒会のメンバーがいた。
久々に見たみんなの目は憎悪と嫌悪と、怒りに染まっていた。
「鈴原…、なんでこんな事した」
なんで、本当なのかと聞いてくれないのだろう。
なんで、僕がしたと決めつけるのだろう。
「僕じゃ、ないです」
「この状況でさー、どうしたらかいちょーがやってないってなるの?無理でしょ」
「遥。まさかあなたがここまでするなんてね」
「さい、て。かいちょ」
違う。信じてよ。
僕はやってない。
君は信じてくれるの?二ノ宮くん。
「何故お前が泣く。泣いていいのは大原の方だろう」
「っ」
縋るように目に涙を溜めて二ノ宮くんを見ると、目を細めた二ノ宮くんは僕は泣ける立場ではないという。
君まで、信じてくれないんですか。
「も、いい、です」
どうせ明日の朝から帰るのだ。
顔をあわせることもない
良い機会だ、と思った。
「帰って、ください」
ドアを閉める直前まで、他の人は何か言っていたけれど、無視をしてパタンと扉を閉めた。
「っふ、ぅ。な、んで、僕が…」
ズルズルと扉に背を預け止まらない涙を拭う。
正直、二ノ宮くんは少しでも庇ってくれると思った。
浮かれすぎていたのか。
それでバチが当たったのか。
「も、やだ……よ」
僕らの関係は思ったよりも酷く壊れてしまったのかもしれない。
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