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帰宅
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一晩たって、朝早くみんながまだ寝てる頃僕は家へと出発した。
予定よりもだいぶ早い時間だけど今は誰にも会いたくなかったから。
いいチャンスだ逃げようと。
ガタガタと揺れる列車で息を吐く。
本来なら、家から迎えの車が来てくれるんだろうけど、父さんがそんなことするとは思えない。
まして連絡も入れてないし。
だから、列車で3時間かけて家まで帰る。
別にそのことに関しては不満とかはないんだけど……
「絶対なんか言われるよなぁ…」
僕の憂鬱の原因はそこだった。
帰ってまず母さんと少し話して、できるだけ父さんと会わないようにして……
早く戻りたいという思いと、あの学園に帰りたくないという思いがぐるぐる回る。
駅に着いた時にはさすがに車が準備されていた。
きっと、僕が歩いて帰ったりなんかしたら、周りの評判が落ちることへの配慮だろう。
それでも、利用出来るものは、ありがたく利用しないと。
「すみません、よろしくお願いします」
頭を下げると、運転手からはい、と返ってきた。
「父さんと母さんはどうですか?」
しばらく車が走って、運転手に聞いた。
一応、体裁として。
「お変わりありませんよ。仲良くやってらっしゃいます」
「そうですか、よかったです」
笑顔を見せれば、ニコ、と返された。
この人達は知らないのだと思った。
仲のいい鈴原家しか知らないのだと。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
鈴原邸へ着いて、運転手さんが僕の方のドアを開けてくれる。
そんなことまで、しなくていいのに。
「お荷物、お持ちしましょうか?
遥様も疲れているでしょう」
「大丈夫ですよ。他の仕事もまだあるでしょうし」
それじゃあ、と若干申し訳なさそうに戻っていく運転手さんを見て、さてと僕も切り替える。
きっと、幸せなのはここまでだ、と。
「ただいま帰りました」
大きな扉を開けて入る。
それに気づいたメイドさんと執事さんが寄ってお帰りなさいませ、と頭を下げる。
「父さんと母さん、いますか?」
「お父様の方は今はお仕事で出ております。お母様の方は、自室でくつろいでおられますよ」
「そうですか。それじゃまず、母さんに挨拶してきます」
はい、とみんなが下がっていく。
正直、みんなのことは好きなんだけど、改まられるのが居心地が悪いというかむず痒い。
慣れてないせいだからだろうけど。
「母さん、遥です。ただいま帰りました」
コンコン、と母さんの自室を叩けば、あらと中から声が聞こえた。
「お帰り、遥。久しぶりね」
「はい」
入って?と言われるがまま母さんの部屋に入る。
怖くて震えそうになる足をなんとか止める。
「夏休み、それもこんな初めから帰ってくるなんてどうしたの?」
「いえ、話したいことがあって」
違和感。
夏休みは帰らないのが当たり前という言い方。
まさか、いやまさかだ。
「母さんの顔、見たくなって」
「あらまぁ、遥ったら可愛いのね」
「父さんはどうしてますか」
「仲良くやってるわ。最近は機嫌もいいみたいだし」
機嫌がいいのは僕がいないからだろうか。
ぐっと喉に力が入る。
「母さんは、僕と父さんの事、どう思いますか?」
「……」
なんで何も言わないの?
ねぇ、母さん。
「どうしてそんなこと聞くの?」
「…、父さんから、暴力を受けていることを知っていますか」
サラッと言ったけど、これは大告白で、
声が若干震えたのがわかった。
その顔は、どうなるの?
驚く?悲しむ?真顔?それとも笑う?
ジッと母さんの顔を見る。
ふ、と崩れた母さんの顔は、
困っていた。
頬に手を当て、
「あらあら、もしかして遥は私が知らないと思っていたのかしら?」
警告が鳴り響く。
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