アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
多々良という人
-
「お久しぶりです、遥様!」
今回の事件の時、ちょうど家を出ていた執事長の多々良さんは、家に帰って他の人からその事情を聞いたらしい。
そして、すぐに二ノ宮家に連絡を取った。
それからすぐに父さんたちとは縁を切り、僕を引き取る決意をしてくれた。
多々良さんは、僕と父さんのことを知っていた数少ない1人。
よく殴られた後、優しくお世話してくれた。
いわば、今誰よりも信じられる人であり、僕が壊れなかった恩人である。
「私が不甲斐ないばかりに…!
本当に申し訳ありません!!!!」
土下座しそうな勢いで深く頭を下げる多々良さんに、慌てる。
『そんな、多々良さんのせいじゃありません!!』
「遥様はお優しすぎます!
私の事など殴ってもよろしいのです!」
『なぐっ!?そんな事できません!』
あと、
『遥様って呼ぶの、やめて下さいって!』
「遥様の事は、私達執事一同大好きなのです!だから、最後までお仕えさせて頂きます!」
大好きって!
なんてこと言うんですか!!
いきなり思いもよらないことを言われ、顔が熱くなる。
「いやいやぁ、よかったね、遥くん!」
これなら私も安心できそうだ。と、一部始終を見ていた二ノ宮君のお父さんが言った。
「正直、なんであっち選んだのか疑問だったが、これなら納得だな」
「二ノ宮様方のような人達に囲まれるのが遥様にとって一番いいのでしょうが…
事情を知っていたこともあり、どうしても何かしたくて…」
「まぁ、そこまで気にかけてくれる人がいるならねぇ」
「遥くんも一番安心できるでしょうしね」
「真人はどっちがよかったのかな?」
ふと、今まで何も言わなかった二ノ宮君に、二ノ宮父がそう聞いた。
「別に、どっちでも…」
「いて欲しかったって正直に言えばいいじゃないですか」
「ばっか、ちげぇし!」
二ノ宮君は、僕がこちら側を取るのは嫌だったのかな…?
どこがもやもやする。
「委員長…また…」
「あっ、ち、違うぞ鈴原!
俺はただお前の選択に任せるって思ってただけで!」
慌てて弁解するような二ノ宮君に、少しだけ笑いが漏れた。
わかってます、と首を縦にふる。
「けど、夏休み中はいるんだろ?」
それだ。
なぜか二ノ宮父母の間で決定事項になっているそれ。
「で、ですが…」
多々良さんも初めて聞いたようで、びっくりしている。
「まぁまぁ、そちらも準備とかあるだろうし、真人も喜ぶからね!」
「親父!」
何だろう、二ノ宮君が、いじられてる…
「それに、何かあったら私達が援助するから、頼ってくれたまえ」
遥くんはもう僕らの家族同然だからね!と。
「は、遥様…」
判断は僕に任せる、ということだろうか。
申し訳ないような顔…というか泣きそうな顔で僕を見る多々良さん。
『えっと、今回は、お世話になります。
学園に入る前に一度、訪ねますから』
あと、
『迷惑ばかりかけると思いますが、よろしくお願いします』
深く深く、頭を下げた。
優しいこの人に何か、恩返しができればいいなと。
「ああぁ、遥様!頭をあげてください!!!」
悲鳴のような多々良さんの声が響いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
89 / 256