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耐えられない
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「は?」
最初に反応したのは二ノ宮君。
「どういうことだよ、それ」
訳が分からないとでも言う風に呟く。
「だから、会長をやめて普通の一般生徒に戻ろ…」
「だからなんだよそれ!」
「っ、」
僕の言葉を遮って二ノ宮君は怒鳴った。
「お前が辞める必要はなくないか?」
次いで先生。
「もっと、他の人なら上手くやれるはずですから、」
「いや、でも…それはそれで危険だと思うんですけど…」
「……」
なんで、なんでみんな僕が辞めることをここまで否定しようとするのだろうか。
「大原君のことだって。紀田くんたちのことだって、ほとんど僕が原因ですし…」
責任をとる意味も含めて、と。
「お前の、お前のせいじゃないだろ。
責任って、なんだよ…」
「他の人なら、二ノ宮君なら生徒会をここまで壊滅的にすることなんてなかっただろうし、やっぱり、僕には荷が重かったんだ」
胸が、痛い。
会長の仕事は、やりがいがあって嫌いじゃない。
けれど、ここまでしてしまったのは紛れもなく自分でもあるから。
「責任っつーなら、さいごまでやれ」
溜息を吐きながら、けれど真剣な声で先生が言った。
「それじゃ、学園が!」
「なんのための風紀だよ」
「、?」
「もともと生徒会と風紀は対立してませんしね。
どちらかというと、支え合い協力し合う立場ですし」
「もっと、俺らを使え。自分だけなんて言うな」
「でも、…、でも」
「それだけじゃ、ないだろ」
言ってみろとでも言うように優しい口調で話しかけてくる二ノ宮くん。
まだ、まだこの人たちに話さないとダメなのか?
「会ちょ…」
「僕が、紀田くんたちの僕を見る目に耐えられないんです……」
一緒に仕事をした。
僕を受け入れてくれた。
誘われた男子会で、励ましてくれた。
いつからか、
あぁ、大原君が来てから。
僕を見る目が変わった。
それは事あるごとに冷たくなって。
「自分勝手だって、我儘なんだってわかってます!」
けど、
「もうあの3人は、僕に笑うことなんて、ないかもしれないのに、」
あの時間だけでも僕にとって幸せだったけれど。
「それでもあそこに座り続けるなんて、僕には、できない…っ!」
何を支えにやっていけばいいのだろうか。
あの広い部屋で、1人なんて…。
「栗原兄弟もいます」
「でも、もう4人では…」
「お前は、俺らだけ見てろ」
お前を否定する奴らなんて、見なくていい。
そう言い放ったのは二ノ宮くん。
「お前を認めてるやつだけ見ればいい」
だから、と。
「辞めるな。辛くなったら、俺のところに来い」
「っ、、」
「俺らがいる。俺がいるから」
ぺたん、その場に座り込んだ。
「僕、じゃなくても…っ、」
「お前しかいねえよ」
お前が会長だ、と。
「俺らはちゃんと見てますから」
酷だ。
したくないと言っている人に、いわば押し付けているに等しいのに。
なんで、
なんでこんなに、
「また、迷惑かけるかも…」
「望むところだ」
笑う二ノ宮くん。
「また、巻き込んじゃうかも」
「願ったりです」
笑う桜月君。
「でも、紀田くん達は…」
「お前は心配しすぎだ。
今はこいつらのことだけ、信じてやれ」
笑う先生。
「…」
学園に戻ったら、またきつくなるなんてこと、僕でもわかる。
けれど、もう少しなら、もう少しだけなら。
「……やって、みます」
小さく呟いたものだったけれど。
みんなには聞こえたみたいで、それぞれに返事をしてくれた。
「ありがとうございます」
この言葉はみんなには聞こえなかったけれど。
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