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勘づく者
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次の日僕は1人、生徒会室の扉の前に立っていた。
いつになく緊張しているのは、1週間と伝えたのに2週間以上も休んでしまったことを中で仕事をしているはずの栗原兄弟に何か言われないか、と思っているから。
そう思われても仕方のないことをしたのは僕の方だけど、仕事してもらってる身なのに、2週間以上も任せっきりにするなんて、申し訳なさすぎる。
「…ふぅ、よし!」
いつまでも迷ってても仕方ないと、気合を入れてドアを開けた。
「ん?んんん??はるちゃん?」
「あ、うん、遅くなってごめんなさい…」
「何言ってる。楽しかったなら、それでいいよ」
「おかえり、はるちゃん」
「う、あ…うん、ただいま」
この人たちは、知らない。
この夏休み僕に何があったのかなんて、知らない。
けれど、逆にそれが、気遣わないその態度が嬉しい。
「今日からは、僕も頑張るよ」
「無理するなよ(しないでね)」
と言われる僕は、何なのだろう。
「昼、行くか?」
時刻は午後12時半。
そろそろお腹もすいてきたころだ。
「そーいえば、もう食堂開くって言ってたよ?」
「なら、行こっか」
3人で席を立って食堂へ向かう。
「あ、二ノ宮くん」
食堂の2階へ行くと、二ノ宮君と桜月君が座っていた。
以前は。
以前はきっと声をかけることもなく1番離れた席に座っただろう。
けれど、
「一緒に、座っていいかな?」
今はこんなことだって言える。
「あ、あぁ」
「?」
二ノ宮くんの返事に微かに桜月くんが首を傾げた。誰もそのことには気づいていなかったけれど。
「なら僕らもいいよね?」
と、僕を挟むように栗原兄弟が座る。
「委員長、また今年も海行ったんだろ?」
「あぁ」
「楽しかったー?」
「…いつもよりな」
チラ、と僕を見たのは気のせいだろうか。
それとも少しは自惚れてもいいのだろうか。
「あ、そうだ二ノ宮君。今日の昼そっち行っていいかな?ちょっとわからないところがあって」
「あぁ」
2学期の中頃にある文化祭。
それに関する資料のことで。
「………悪い、もう戻る」
「え、もう?あ、そうか仕事もあるしね」
ご飯を食べ形跡はなかったけれど。
立ち上がって、スタスタと階段を下りていく。
「委員長!?待ってください!」
それを追って桜月君も階段を下る。
「委員長、何かあったのかな?」
「そうだな」
「?」
そういう双子の言葉の意味が僕には理解できなかった。
「委員長!待ってくださいって委員長!」
桜月は二ノ宮を追って走る。
「どうしたんですか!」
「直人」
「はい?」
「……俺は、どうすればいい」
「え、?」
「俺は、どうやったらアイツを守れる」
横から見る顔はすごく苦しそうで。
「どうしたらいい」
泣きそうな顔をしてて。
くそっと吐き捨てて、あとは黙ってしまった。
ひた、と足を止めて低い声で呟く。
「何があった?」
何が委員長をあんな顔にさせる?
アイツとは、会長のことだろうか。
「…いや、まさかな」
一瞬ある考えがよぎったが、それは振り払った。
そんなこと、あるはずがない。
けれどその考えが当たっていたことを、今日の午後、知ることになる。
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