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いたい
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食堂から戻ってきて、少しした後、風紀委員室に向かった。
コンコン、と二ノ宮くんの部屋の扉を叩けば、「なんだ」と返ってくる。
「鈴原です。入るよ?」
「あ、まて…っ」
二ノ宮くんの制止の声よりも先に、扉を開けてしまった。
けれど、そこにいたのは二ノ宮君だけではなくて。
見たこともない生徒。
綺麗な金髪の髪は地毛だろうか。
碧い瞳は裸眼だろうか。
小柄なその体は、とても華奢で。
妖艶な唇が動く。
「久しぶりだな、遥」
それは聞いたことのある声。
けれどできれば、聞きたくない声。
姿形は違えども、その声だけは何も変わらない。
「お、大原、くん…?」
僕の記憶の中にある人で、その声を持つのは彼だけ。
「お、よくわかったな」
変装してたのに、と。
何があったのか。
なんでこんなに雰囲気が違うのか。
「なんで、君がここに?」
「真人に用があったんだ」
なぁ?と二ノ宮くんの方を振り返る。
「何か、あったの…?」
「何もないよな?」
「、……あぁ」
嘘だ。
何もないはずなんてない。
何も無かったらなんで、なんでそんな苦しそうな顔をしてるの。
「あぁそうだ、この際だから言っちゃいなよ」
するり、と二ノ宮くんの腕に巻きつく大原君。
その光景になぜだかドクンドクンといやな鼓動が胸を打つ。
ボソ、と聞こえなかったけれど、大原君が二ノ宮君の耳元で何かを言った。
「っ、」
「ねぇ、真人」
ふー、と大きく息を吐いた後、二ノ宮君が大原君の肩をぐっと抱き寄せた。
「俺ら、付き合うことになったんだ」
「、え?」
ギュッと、心臓を握られた感じがした。
「そーゆーことだから。邪魔しないでね?」
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、またグッと近づく大原君。
大原君が二ノ宮君のことを好きなことは知っていた。
二ノ宮君も、大原君が好きだったの?
なら、よかったじゃないか。
両思いなら、2人とも幸せじゃないか。
「そっ、か…。おめでとう、2人とも」
「うん」
「っ、鈴原…っ」
「真人?」
「、あぁ、ありがとう」
あぁどうしよう。
来たばかりだというのに、早くここから立ち去りたい。
「いつまでいるの?空気読めよ」
「っ、あ、…ごめん」
大原君から放たれた冷たい声に、思わず扉を開け、走って外に出た。
風紀委員室を出るとき、すれ違った桜月君の声が聞こえたけれど、それに止まってる余裕なんてなかった。
「はあっ、はぁっ」
走る。
走って、走って、走って、走って。
今日は部活があるからと出て行った、双子のいない静かな生徒会室に入る。
「はぁっ、な、んで…」
二ノ宮君達のことは、祝福してあげなきゃいけないのに。
グッ、と胸を抑える。
ギリギリと外からの圧力がかかる。
けれど。
それ以上に、
胸が、ドクドクと早打つ胸が、
「いたい……っ」
あまりの痛さに、うずくまる。
なんで。
ポタポタ、と絨毯に雫が落ちた。
なんで、泣いてなんかいるのか。
いいことを聞いたはずなのに、
なんでこんなに、
「胸が痛いの」
ぐ、とさらに強く。
中の痛みを消すように、胸を抑えた。
ギリギリと掴まれているような感覚に、吐き気がする。
だめだよ
「ちゃんと、」
ちゃんと笑わなくちゃ。
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