アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
29
-
ジムの中に入るとカウンターがあって壁がそそりたっていた。
四角の部屋の2面半がボルダリングの壁。
椿が想像していたとおり、色々な形の石が張り付いていた。
そこには何人かの人がいて、登ったり談笑したりしている。
できるのかな……と椿が一抹の不安を覚えながらカウンターに向き直る。
「おー、智。あれ?そちらは?」
「おはよう。あー、椿くん。」
カウンターには、茶髪のおじさんがいた。
無精髭を生やしたどこにでもいそうなおじさん。
彼と智は知り合いのようだった。
早々に椿の存在に違和感を覚えた男と、シンプルすぎる紹介をする智。
それじゃあダメだろ。
男と目が合う椿。
しかし椿は自分をなんと紹介していいのかわからずに頭をぺこりと下げた。
「なに?椿くんは智の親戚かなにか?」
「あっ、えっと。」
なんて説明しよう。
そりゃそうだよな、得体知れないし。
この人と土井さんは知り合いみたいだし。
椿が口をぱくぱくさせた時だった。
「椿くんは従姉妹違い」
斜め前の少し上から聞こえる声。
……いとこ……違い?
「はぁ……なんでまた。」
「うち親戚と仲いいんだよ。暇してたからさ、連れ出してきちゃった。ねぇ椿くん。」
「え、あ、はい。」
親戚?
いとこ?
たしかいとこ違いって、いとこの息子か娘の続柄だったよな……?
どうしてそんな紹介の仕方するんだ……?
椿の胸の中に一気に黒い靄が広がって、椿の心臓はつかまれたように縮こまった。
なにそれ、俺が紹介するのに恥ずかしいから?
別にデート相手って言わなくても、友達とかでも良くないか?
それとも友達の相手にもできないような存在?
子守頼まれて仕方なく連れてきてやったっていう体裁を立てなきゃ行けないような存在なわけ?俺は……。
「今日は?」
「とりあえず3時間。シューズ貸して?」
「何cm?」
「椿くん、足のサイズは?」
「26cm……」
会話が展開していく。
椿はそれを上の空で聞きながら、そうぞうよりもずっと智との距離が遠いことを知ったのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 131